介護支援ブログ

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介護事業所キャリアパス制度導入事例4 社会福祉法人悠遊

中期経営計画をキャリア階層ごとの個人目標に

 社会福祉法人悠遊は、2007年、3 ヶ年を期間とした中期経営計画を立案しますが、職員をいくら採用しても、定着していくことが困難な状況にありました。

 地域のために福祉を実践していくためには、人材の定着が必要であり、「変えていかなければならない」と危機感を募らせ、組織のあり方等を見直すため外部のNPO法人の助けを借りて、組織改革を進め、キャリアパスの仕組みを整備していきました。

 

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【事業所プロフィール】

名称:社会福祉法人悠遊

設立:平成5年3月

所在地:東京都西東京市泉町3丁目15番28号

事業:デイサービス、認知症対応型デイサービス、グループホーム、訪問介護、居宅介護支援、地域包括支援センター、小規模多機能型居宅介護

従業員数:約150名(正規職員25%、非正規職員75%)

 

組織図はシンプルに等級制度でメリハリを

 同法人の各事業所における職位階層は管理者-主任(もしくは副主任)-一般職員というシンプルな組織ですが、さらに、役割と貢献度に応じた等級によって、細かく区分されています。処遇を明確に分けるため、正規職員は事業の中核を担う福祉専門職を処遇する「総合職群」と看護師やケアマネジャーなど特定の仕事に特化している職種を処遇する「専門職群」の2つの職群に分類されています(図表1)。

[図表1:職群と等級及び昇格の要件]

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 総合職群は、9つの等級が設定され、一般職員は総合職1級から4級まで、主任・副主任は指導職1級と2級、管理者は管理職1級、2級に分かれています。

 学校を卒業して入職した介護職員は、まず総合職4級に格付けられ、その後、「役割等級制度要綱」に定められた勤続期間と人事考課結果をもって総合職3級に昇格、処遇も見直され、その後も同様に総合職2級から1級へとキャリアアップする仕組みとなっています。

 

中期経営計画から職員個々の年間目標を設定

 同法人では、2007年度から始まった中期経営計画の後、現在は5ヶ年の計画を策定しており、その計画に則って、毎年度の事業計画を策定しています。

 同法人の人事考課の仕組みは、ここから始まります。まず、事業計画を達成すべく、統括責任者が各管理者の役割を明確にします。つまり事業計画の柱が5つあれば、その5つを達成するための目標を、各事業の管理者一人ひとりに設定します。

 そして、管理者は事業目標を達成するために、個々の職員がどのような役割を果たしていくのか、目標を設定します。これを「役割マトリクス」(図表2)と呼んでいます。

[図表2:中期経営計画から個人目標設定の仕組みと役割マトリクス]

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 「役割マトリクス」は、等級ごとに定められている「職務基準書」(図表5)にある「職務水準」や「責任と権限」を勘案して管理者が決定し、職員と4月に話し合いをして、内容をすり合わせします。

 このシートは1枚に職場の目標(事業目標)を縦軸に、メンバー氏名を横軸にとって、一覧表としているため、チーム内において①という目標を達成するために、誰がどのような役割を負っているのかが確認することができる仕組みとなっています。

 

人事考課の仕組み

 人事考課は「人事考課制度要綱」に規定されていて、上半期と下半期の2回実施しています。考課の対象は、①役割マトリクスの実施状況、②前期の目標達成度と職務基準書にある「担当職務とその水準」としています。

 ①については、半年間を振り返り、年度初めに設定した目標ごとに成果や問題点は何か、今後どのように対応していくのかを振り返りまとめ、評価します(図表3)。

[図表3:①の評価:役割マトリクス 管理・評価シート]

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 ②については、等級別に示された「リスクマネジメント」、「業務改善」、「人事・人材育成」、「協調・コミュニケーション」の4つの視点と「期待される能力」、「期待される姿勢」の2点について評価します。(図表4)

[図表4:②の評価:等級別 評価シート]

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                                     [図表5:職務基準書]

 

 評価は自己評価と1次、2次評価を行い、最終的な評価は1次評価と2次評価の平均点により決定します。半期ごとの評価結果は賞与へ反映し、上半期と下半期を合わせて年度の評価結果を「S」「A」「B」「C」「D」と決定し、昇給と昇格へ反映させる仕組みとしています。

 

キャリアアップと処遇の仕組み

 給与は基本給と諸手当(管理職手当、役職手当、職務手当、資格手当等)により構成されています。基本給は給与表を廃止し、等級ごとに設定されている下限額と上限額からなる範囲給により決定されます。

 初任給は学歴及び資格の有無、前歴により決定され、新卒であれば総合職4級に格付けされます。そこで、1年間職務を遂行し、昇格の要件となる「B」評価をとることができると翌年度は総合職3級にキャリアアップできます。その時、昇格による処遇の見直しとして定期昇給とは別に「昇格昇給」が基本給に加給されるため、職員にとってはキャリアアップすればするほど、基本給のベースが上がる仕組みとなっています。

 また、1年間の評価結果が昇給額に反映されますので、1年間の頑張りが報われる仕組みとなっています。

 

本事例の学びどころ

中長期計画から個々の目標設定に落とし込む

 2010年度から始まった中期経営計画に則って、人事管理制度を抜本的に見直し、2011年から導入した当制度は、今年で5年が経過しました。法人理念を具現化するために時代と地域のニーズに合わせて中期経営計画を策定し、毎年の事業計画に反映させ、それを個々の職員の目標設定にまで落とし込むことで、誰がどのような仕事をしているのかが非常に明確になっています。

納得性を高める、職務基準書の作成

 それだけではなく、役割等級制度を導入する際に作成した職務基準書により職員に求められる職務水準が明確になるため、納得性の高い面もあります。

 すべての事業所において定着率が上がっている事実は、このような取り組みが功を奏しているといえるのではないでしょうか。

 

ご担当者から一言

 この制度を導入したことで、職員同士がお互いの仕事について理解しあうことができ、働きやすくなったように感じています。これまでは、地域の中で人材を募集してきた結果、中途採用の女性が多く、組織としては弱い部分が多くあります。そのため、これからは人材の多様化を目指して一般大学生を定期的に採用していけるよう体制を整えなければならないと思っています。

 また、一般的な研修体系は策定していますが、各管理者の希望により研修の機会が提供されている面があります。そのため、定期的に実施される外部機関の階層別研修の受講を法人として制度化するなど、育成の基準づくりが必要だと思っています。

 

 

社会福祉法人悠遊 事業責任者 伊藤隆志様(写真左)/事務局長 浅野正彦様

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【出展:静岡県介護事業所キャリアパス制度導入ガイド】

 

キャリアパス要件について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

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