介護支援ブログ

介護制度について分かりやすく解説しています。介護に関っている全ての方々に役立つ総合介護情報サイト目指しています。現在は主に介護職員処遇改善加算、キャリアパス要件、介護保険施設等の実地指導について執筆中です。

介護事業所キャリアパス制度導入事例3 株式会社グレートフル

f:id:kaigo-shienn:20180426115319p:plain

 

地域に必要とされる人材育成で人が“集まる”組織をつくる

  株式会社グレートフル代表取締役の岩﨑氏は、20年ほど介護の現場で働いてきた中で、「地域に役立つ」ことがこの仕事の目的であると感じるようになりました。会社を設立し、地域に必要とされる人材を育てることを経営の柱にしているのは、その表れです。同社は、社員が経営意識を持ち積極性を発揮することにより、平成22年の設立当初から現在まで、訪問介護を中心に事業規模を拡大し続けています。

 

→ほかの事業所例をご覧になりたい方はこちら

 

f:id:kaigo-shienn:20160805151455p:plain

 

 

 

 

【事業所プロフィール】 

名称:株式会社グレートフル

設立:平成22年4月

所在地:埼玉県さいたま市北区吉野町1-390-2

事業:居宅介護支援、訪問介護、通所介護 他

従業員数:150名(うち、正社員約20名)

 

人事評価制度の概要

 同社の人事評価は年1回のサイクルで行います。図表1に人事評価基準(抜粋)を示しました。できるだけシンプルな表から始め、現在はこの表を使用しています。仕事で必要な行動特性を20の評価項目として分類して、それぞれに目指すべき具体的な行動を「5:志事、4:士事、3:仕事、2:私事、1:死事」という意味を持たせた段階で規定しています。年1回、人事評価シート(図表2)で各評価項目の評価を行いますが、評価シートの目的は動機づけの意味合いが強く、次のステップをあらためて一緒に考える機会になっています。

 

[図表1:人事評価基準(抜粋)]

f:id:kaigo-shienn:20160805151524p:plain

 

[図表2人事評価シート]                 [図表3:基本給と役付手当て]

f:id:kaigo-shienn:20160805151701p:plainf:id:kaigo-shienn:20160805151753p:plain

                      

 また、事業所ごとに各々が独自の目標テーマ、売上目標、個人テーマを立てており、振り返りをしていますが、目標が達成できなかった時に、その社員に「今、十分に地域から信頼されているだろうか?」というような質問を投げかけたりしながら、なぜ目標に達しなかったのかを考えてもらうと、例えば「服装の見直しをしてみよう」等の具体的な対策が出てきます。

 

頑張りを即時反映、役付手当で給与大幅アップ

 続いて給与制度の基本的な考え方です。売上や仕事内容には月により波があります。そのため、給与への反映は、定期昇給ではなく、半期程度の活躍を見て、結果を出した時に昇給が可能としています。

 骨格となる給与の仕組みは図表3の通りです。管理者がエリア長を兼ねる場合などは、実際に仕事も大変ですが、管理職手当とエリア長手当は併給されるので、給与面では大幅にアップします。

 また、役付手当のA~Eは評価結果ではなく、役割に応じた区分です。同じ職階でも役割を大きくしていけば、手当額も大きくなります。「家族を養うだけの給与を得るために、早期に管理者になることを目指す」、そんなライフプランと結び付いた目標設定もあり得ます。

 

人材育成の考え方

①本人の成長に合わせた個別のキャリアアップ過程

 同社の育成方針は、一貫して「地域に役立つ人材になる」ことを目指しています。一定のキャリアパスもありますが、実際のキャリアアップの過程には個別性があり、その人の将来をいかに可視化していくかがポイントです。新規採用をするとその人にどんなキャリアを望むかを事業所の管理者や経営幹部が話し合い、本人の希望に合わせキャリアアップのシナリオを作成した上で、育成にあたります。

 数年前、10年間ニートをしていた人が入社しました。いつものように管理者と経営幹部で育成計画を検討し、まずはきちんと出社することを目標にしました。仕事内容は内勤から始め、慣れてきたら訪問介護を1件、2件と増やしていきました。2年ほどパートとして勤め、本人に正規職員になる意欲が生じたところで、正規採用をしました。本人の努力もあり、半年後にはサービス提供責任者としての役割を持つようになり、現在では、いずれは1事業所を任せたいという期待ができるまでになっています。

育成計画は経営幹部と管理者がよく話しあって決めますが、職場側は強く求め過ぎず、前述のケースで言えば、本人が自信をつけたり、モチベーションが上がってくるのを待つという長期的な眼も持っています。

 

②介護スキルは実践で身につけ管理者が不足している部分を把握する

 訪問介護は施設系の事業所と比べると、上司が直接指導する機会は少なくなります。基本的な介護スキルは経験値に応じて先輩・上司の業務に同行したり、デイサービス事業所でのOJTや、必要な研修への参加などで身につけます。

同行訓練やデイサービスでのOJTは、先輩や上司の仕事ぶりを直接見ることができる貴重な場面です。そうして実践的に基礎的なスキルを身につけた後は、実際の業務を行なった際にどのようなサービスをしようとしたのか等の報告を聞く中で、その社員に必要なことが見えてくることがあります。

 

③プラス思考を浸透させマネジメント意識を教育する

 仕事の結果に影響するものに、考え方、熱意、能力がありますが、同社では特に考え方を重視しています。同社の「経営理念・行動基準」は、「三方良し 私たちは売り手良し、買い手良し、世間良しを実践し続けます」です。採用時から、地域の人の信頼を得て事業が成り立っていることをしっかりと伝え、やりがいのある仕事であることを理解してもらい、会社の理念に共感できる人を採用しています。難しい業務に対してもポジティブにとらえてやりがいを感じること、また「地域の役に立つ」ということを常に基本とし、例えば、スキルアップの目的が自己満足で留まらないように、この地域にサービスを提供していく上で必要な能力は何かという視点で発想します。社内の研修では社長自ら講師となり、理念の徹底とプラス思考の考え方を学ぶ機会を作っています。

地域に必要とされる人材には、「売上」や「マネジメント能力」への意識も必要とされます。これらも育成の初期の頃から研修を行い、全社員に繰り返し意識づけします。

 

④地域に溶け込むことを評価する

 地域のお手伝いにどんどん出ていきます。ゴミがたまったお宅へ片付けに行くなどの事業収益に関わらないボランティア活動も、評価の対象にしています。介護の仕事だけで評価されるのではなく、地域の中で活躍している自分を評価されると感じることができます。それが、モチベーションになりますし、地域から信頼され、結果として仕事がついてくることになります。

 

日報は強力な育成ツール

 社員は日報を提出することになっています。そこには、行動記録だけではなく、地域の情報や気づいた点や他社の事業所の情報、反応の良かった営業、会食・会合等のアポイント、そして困っていること等がメールで送られてきます。日報は社長が全てを確認していますが、全社員も相互に見ることができ、またコメントすることができる仕組みになっています。困り事が発生し、もし人が必要ならば、みんなで手伝いに行く等の対策がさっと打てる仕組みであり、また、同僚の頑張りが見えるので励みにもなっています。

 社長が日報を見る際に、日常の業務管理や人材育成という視点で確認しているのは、例えば誰か人と会うのも、どんな観点で人と会っているのかです。社長は気になる報告にはすぐ電話で確認し、必要な判断や指示をします。これを繰り返していると、社員も自然と同じ見方ができるようになっていきます。日報等の普段の情報は評価をつける際の材料にもなっています。

 

現場の社員が主体となった事業展開

 また、現場の社員が地域に溶け込むと、隣接する地域のニーズや状況も見えてきます。そうすると、どこに事業所を新設するのがこの地域に合っているのか、どうエリア分けしたら効率がいいか等が見えてきます。同社では、現場の社員が新たな事業に関する提案をする仕組みを作っており、提案が会社の事業計画と合えば、その社員が中心となって事業を展開していきます。社員が管理者、そしてエリア長として自分のキャリアアップを目指せる仕組みとなっています。

 

本事例の学びどころ

人が集まる組織づくり

 経営方針、事業方針は分かりやすく何度も示し、それに合致した人材の採用や育成、業務管理、評価を行うことが、社員のモチベーションを高めています。地域に認められる社員が、次の仕事や新たな入社希望者を呼ぶ好循環を生んでいる組織づくりは参考にしたいポイントです。

個人別のキャリアアップのシナリオを作成

 会社としてのキャリアパスはありますが、そのステップはその人のキャリア希望や能力・経験、個別の事情に合った育成方針を作成しています。仕事を通した様々な経験の中で、着実にステップアップし、地域貢献の「志」を実現していく、その過程に注目です。

 

ご担当者から一言

 当社のような小さい事業所では、キャリアプランを作っても、新たな事業所を作り、ポジションを増やさないと昇格・昇給していけません。技術が上がるだけでは、給料は一定のラインで止まります。ひとつの事業所の所長になったら、そこで留まらず、自ら新たな出店計画をする。そのために自分の事業所を任せられる後任を育てる、という流れができているので発展性がある組織になっているのだと思います。

 社長から正社員だけでなくパートのヘルパーさんに対しても感謝を伝えています。そういう関わり方が、いい組織を作っています。規模も大きくなってきましたので、キャリアパスの仕組みも変わっていくと思いますが、さらによい形として整えていきたいと思います。

 

 

株式会社グレートフル 代表取締役社長 岩﨑英治様(写真右)/管理部部長 玉川秀人様

f:id:kaigo-shienn:20160805123455p:plain

 

【出展:静岡県介護事業所キャリアパス制度導入ガイド】

 

キャリアパス要件について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

にほんブログ村 介護ブログ