介護支援ブログ

介護制度について分かりやすく解説しています。介護に関っている全ての方々に役立つ総合介護情報サイト目指しています。現在は主に介護職員処遇改善加算、キャリアパス要件、介護保険施設等の実地指導について執筆中です。

地域密着型通所介護の運営基準とは?

 介護事業者の皆様は、ご利用者のニーズに応え、また職員の暮らしを支えるべく日々ご尽力のことと思います。

 健全な経営・財務状況を実現するうえでは、運営基準の遵守が欠かせません。

 ぜひ、この記事をご覧いただき、お役立ていただきたいと思います。

 

 

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地域密着型通所介護の運営基準とは

 

サービス計画書について

 介護保険サービスの提供は、すべて契約に基づいて確実に実行されなければなりません。

 その契約内容が記されているのが施設サービス計画書となります。

 居宅介護支援におけるケアプランが作成されている場合には、その内容に沿ったものでなければなりません。

 地域密着型通所介護事業所には、「利用者一人一人の人格を尊重し、利用者がそれぞれの役割を持って日常生活を送ること」ができるようにサポートすることが求められています。

 一人一人の身体状況、認知機能の状態、家族との関係、住宅環境などの情報から必要な支援を導き出していく必要があります。

 また、サービス計画書の内容についてはきちんと説明を行い、同意を得る必要があります。

 さらに、計画書を交付することも忘れてはなりません。

 本人・家族への説明義務については、費用の面でも重要です。納得されるまで丁寧な対応をこころがけましょう。

 

地域住民との交流

 地域密着型のサービスは、地域包括ケアシステムにおいても、とても重要視されています。

 住み慣れた街(中学校の学区内程度の範囲)の中で、高齢者が地域との関わりを持ちながら暮らしていけるように、地域住民と積極的に交流の機会を持つことが重要です。

 

運営規程の整備

 以下の10項目について、運営規程を定めておく必要があります。

  • 事業の目的及び運営の方針
  • 従業者の職種、員数及び職務の内容
  • 営業日及び営業時間
  • 指定地域密着型通所介護の利用定員
  • 指定地域密着型通所介護の内容及び利用料その他の費用の額
  • 通常の事業の実施地域
  • サービス利用に当たっての留意事項
  • 緊急時等における対応方法
  • 非常災害対策
  • その他運営に関する重要事項

 

運営推進会議の開催

 指定地域密着型通所介護の提供にあたっては、運営推進会議を半年に一度以上の頻度で実施することが必要です。

 会議は以下のメンバーによって構成されます。

  • 利用者
  • 利用者の家族
  • 地域住民の代表者
  • 所在地のする市町村の職員、又は所在区域を管轄する地域包括支援センターの職員
  • 地域密着型通所介護について知見を有する者等

 

 事業者は、運営推進会議に対し活動状況を報告し、評価を受けます。

 同時に運営推進会議から必要な要望、助言をヒアリングして運営に反映させていくことも求められます。

 また、会議の内容について記録し、それを公表することも必要です。

 

職員体制について

 事業所ごとに従業者の勤務の体制を定めておかなければなりません。

 複数の事業所がある場合に、兼務できる職種は限られています。

 直接利用者の支援を行う介護職員は、事業所ごとで専従していなければなりません。

 また、介護サービスの質を向上させていくためにも、職員に対して研修の機会を設けることも求められています。

 

苦情や事故への対応について

 利用者からの苦情には真摯に対応する必要があります。

 また、市町村などから派遣される第三者が行う相談援助業務などに協力するよう努めなければなりません。

 事故が起きてしまった際には、直ちに市町村、当該利用者の家族、当該利用者に係る指定居宅介護支援事業者等に連絡を行います。

 そして、損害賠償についても必要であれば、速やかに手続きを行います。

 事故の状況やその後の対応について記録を残すことも必要です。

 

災害や感染症への対応について

 非常時や災害時の具体的な計画を定めるとともに、関係機関への通報及び連携体制を整備する必要があります。

 また、職員にその内容を周知して、定期的に防災訓練を行わなければなりません。

 感染症の予防のためには、日頃から衛生的な管理に努める必要があります。

 そのほか、感染症が発生してしまった際に速やかに収束させることも求められます。

 

記録の保全

 ここまでの各項目においても再三登場する「記録」について、きちんと保管しておく必要があります。

 サービスの完了から2年間保管の義務があります。

 

 詳しくは次項で説明します。

  

 

地域密着型通所介護の運営基準における注意点

 地域密着型通所介護事業所を運営していく上で、特に気をつけなければならない点が2つあります。

 

サービス提供の記録

 サービス提供の記録は、実地指導や監査の際に正しく運営しているという「証拠」となるものです。

 実地指導も監査も、指導項目については「当日現地で確認すること」が原則です。

 監査の場合、通知が当日直前というケースもありますから、日頃からきちんと整備しておきましょう。

 サービス提供の記録は、サービス提供が完結した日から最低2年間は保管が義務付けられています。

 ただし、都道府県によって必要とされる保管期間が異なります。

 「5年間」としている自治体もありますので注意が必要です。

 

利用者定員の超過

 利用者定員は、必ず守らなければなりません。

 減算にはならない場合であっても、「基準違反状態」となってしまうと指導の対象となり、監査当日が超過した状態であれば罰則も考えられます。

 定員の超過が例外的に認められるのは、「災害その他やむを得ない事情がある場合のみ」とされています。

 利用者都合による急な利用などでは、「やむを得ない事情」とは認められませんので注意が必要です。

 

 

地域密着型通所介護の運営基準における減算

 地域密着型通所介護事業所においては、運営基準を満たせないことによる減算の取り扱いは他の小規模型事業所と同様です。

 減算の対象となるのは、「利用者定員を超過した場合」と、「介護職員・看護職員に欠員が出た場合」の2つです。

 それぞれについて解説していきます。

 

利用者定員を超過した場合

 定員をオーバーしている場合の減算については、1カ月単位の総数で判断されます。

 定員15名で定休日なしで30日間運営した場合、最大利用定員は15×30で延べ450人となります。

 この人数を1名でも上回ってしまうと、翌月より利用者全員の介護報酬が30%減額されてしまいます。

 月単位で定員超過が解消されるまでこの措置は継続されます。

 

介護職員・看護職員に欠員が出た場合

 まず、欠員の程度によって、減算の期間が異なります。

 欠員が基準の一割を超えている場合には、翌月から欠員状態が解消されるまでの間、介護報酬が30%減額されてしまいます。

 欠員が基準の一割以内に留まる場合には、減算の開始が翌々月となり、翌月末日までに欠員が解消していれば減算は生じません。

 

 地域密着型通所介護の場合、看護師については施設の常駐していなくとも、密接な連携が取れる状態にあれば良いこととなっています。

 併設の介護保険施設やクリニックなどと連携できており、常時電話にて対応可能などの条件を満たせれば、その場に不在でも可です。

 介護職員の場合は、提供時間帯を通じて必ず一人以上の配置が必要です。

 定員が15名を超える場合は、さらに人数の確保が必要となります。

 定員18名の場合は1.6名となります。

 

 いずれの場合においても、減算された状態はあくまでも「非常事態」となります。

 最大限の努力で解消に当たる必要があります。長期化する場合には指定取り消しとなることもありますので注意しましょう。

 

 

地域密着型通所介護の運営基準違反となる場合

 運営基準を満たしていないと、基準違反を起こしてしまいます。

 悪質な場合は事業所の指定取り消しとなり、すなわち廃業を意味します。

 悪意ではなくとも、知らなかったでは済まされないのが運営基準ですので、基準違反を指摘されて慌てることがないようにしていきましょう。

 運営基準の具体的な項目について、主なものをチェック形式で挙げておきます。

 

  • サービス提供の際は、事前に重要事項説明書の説明を行い、同意を得ていますか?また書面にて交付していますか?
  • サービスの提供が困難である場合にきちんとケアマネジャーに報告し、他事業所の紹介などを行っていますか?
  • 介護認定申請に関わる手続きへの協力体制ができていますか?
  • 可能な限りサービス担当者会議に出席し、利用者の心身の状況把握、サービスの利用状況などの情報収集に努めていますか?
  • 居宅介護サービス計画書に記載された内容に沿ったサービス提供を行っていますか?
  • 利用定員を超えた利用者を受け入れていませんか?
  • 通所介護計画書を正しく作成していますか?また、利用者または家族に説明して同意を得てから、書面にて交付していますか?
  • サービス提供に必要な職員の人員確保ができていますか?
  • 利用者及び家族からの苦情に、誠意を持って対応していますか?
  • 事業所内に、運営規定の概要、勤務体制、重要事項がだれにでも見えるように掲示されていますか?
  • サービス提供の記録を、サービス提供の完結から2年間保存していますか?

 

 

まとめ

 いかがでしたか?

 運営基準について指摘を受けることがないように、日頃から気をつけて運営に当たりたいものです。

 特に記録については、「記録がなければやっていないのと同じ」と認識する必要があります。

 介護本来の業務に追われて、どうしても後回しになりがちな書類業務ですが、溜め込まずに整理していくようにしていきましょう。

 

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運営基準について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

 

(専門家監修:矢野文弘 先生)

処遇改善加算が返還となるケースは?

 今、日本では超少子高齢化に伴い、労働力の低下が問題となっています。

 その中でも介護業界の人材不足は深刻です。

 「仕事がきつくて安月給」と刷り込まれてしまったイメージを拭うのはそう簡単なことではありません。

 仕事が大変なのはすぐには変えられないかもしれませんが、給与の面では救世主も現れています。

 それが今回のテーマである「介護職員処遇改善加算(以下、処遇改善加算)」です。

 しかし、加算の算定においては正しい理解と運用が不可欠です。

 せっかく取った加算を返還することになってしまったら、給料の大幅カットにつながるだけに、職員の大量離職が起きてしまうかもしれません。

 ぜひ、この記事をご覧いただき、お役立ていただきたいと思います。

 

 

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処遇改善加算とは

 

 処遇改善加算とは、2012(平成24)年4月より導入された、介護報酬における「加算」の一つです。

 施設サービス・在宅サービスを問わず、全ての介護の仕事で働く職員の待遇改善を目的としています。

 目的がはっきりしている加算であるため、使い道が限定されています。

 

 処遇改善加算で収入が増した場合、得られた金額以上のお金を必ず職員の給料アップや資質向上などに使って、職員に還元しなければなりません。

 制度のスタートから5年の間に加算はどんどん拡充されています。

 2017年では、加算I~Vの5段階となりました。

 最上位の加算Iを算定すると、職員の給与を最大月額で37,000円アップできるだけの収入が得られます。

 

 事業者は、職員の給料を少ない負担でアップすることができます。

 しかし、制度の拡充に伴って要件は細かく、厳しいものになっています。

 2017年に新設されたキャリアパス要件IIIの条件には「昇給」があります。 

 一時金などでの昇給も認められてはいますが、基本給の昇給を想定しています。

 事業所側にとっては、将来的にコスト増が経営の重みになるリスクも含んでいると言えます。

 人材を獲得するためには、他事業所よりも高い加算をとってアピールしたいところですが、身の丈以上の加算を無理に取得することにならないように注意が必要です。

 

 

処遇改善加算の不正

 では、実際にどのような行為が処遇改善加算についての不正請求とされてしまうのでしょうか?

 考えられるケースを挙げていきます。

 

加算を職員の処遇改善に使用していない

 処遇改善加算は、使い道が限定されている加算です。

 加算によって得られた金額以上のお金を、職員の処遇改善に使わなければなりません。

 もし別のことに使ってしまっていると、それだけで不正請求となります。

 

キャリアパス要件に定められた研修を全く行っていない

 処遇改善加算を算定するために必要なキャリアパス要件には、施設全体で職員の育成計画を考え、キャリアアップにつながるOJTやOFFJTを取り入れることが求められています。

 ただし、計画期間については定めがない上、業務に差し支えるような無理な研修計画を作ることがないように、という注意もあります。

 不正とされてしまうケースとしては、「年間を通して全く行っていない」、「計画自体が立てられていない」などが考えられます。

 

昇給の要件を満たしているのに昇給させていない

 新設されたキャリアパス要件IIIには、「経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組み」か、「一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み」を設けなければならないとしています。

 加算の算定にあたって就業規則等でこの仕組みを全職員に明らかにすることが求められます。

 決められた条件を満たしているのに昇給させない、というケースは、明らかに違反とみなされてしまいます。

 

 経営上の理由から職員の給与を維持できない事態となった場合には、「特別な事情に係る届出書」を提出する必要があります。

 ただし、処遇改善加算はあくまでも使い道の決められた加算ですから、届出を行っても他のことに使うことはできません。

 また、加算要件を満たせなくなった場合には、変更届を提出して、加算区分を変更する必要があります。

 これらを怠ってしまいますと、不正請求と判断されてしまう可能性があります。

 

監査時に虚偽の報告をした

 介護サービス事業者に、実地指導を省略して監査が入るということはめったにないことです。

 この時点で、内部通報や利用者からの苦情等により、監査官は目星のついた状態で立ち入りしていると考えなくてはなりません。

 この記事をご覧の方には悪質なケースはないと思いますが、知らなかったでは済まされないこともまた事実です。

 

 指摘事項があった際は、真摯に受け止めることが大切です。

 「知らなかった」と「知っていて故意にしていた」では悪質さの度合いが大きく異なります。

 虚偽報告を行ってしまうと、不正請求よりもそちらの方が重い処分の対象となってしまいます。

 取り繕うとして、あることないことを口走ってしまわないように十分注意してください。

 

 

処遇改善加算の返還処分

 介護サービス事業者における行政処分には、以下のような種類があります。

 

  • 一部効力の停止
  • 介護サービス事業者としての指定取り消し
  • 介護報酬の返還

 

 事業所の運営についての処分として、一部効力の停止または指定取り消しが行われます。

 一部取り消しには、新規利用者の受け入れ停止や介護報酬の一部減額などが該当します。

 また、指定取り消しは事業の継続ができず、「廃業」を意味します。

 指定取り消しとなるのは「虚偽」や「隠蔽」など極めて悪質と判断されたケースとなります。

 ここでは、「不正による返還」について解説していきます。

 

 介護サービス事業所において、不正に得た介護報酬は返還を求められます。

 通常、不正に得た金額の4割増の金額が請求されます。

 この返還金は「公法上の債権」となるため、支払われないと税金と同じく「滞納」の扱いとなります。

 監査の結果返還を求められる場合には、同時に指定取消し処分なども受けていると考えられるため、事業が継続できない上に返還を迫られるという厳しい状況になってしまいます。

 

 処遇改善加算は、単位数が事業所のサービス種別ごとに異なりますが、金額の大きな加算と言えます。

 その金額に4割の追徴金が課せられますので、事業規模が大きな事業所で不正が長期間に渡っていた場合、請求金額が億の単位となってしまうことも考えられます。

 

 返還には、自主的な返還と命令による返還の2つがあります。

 自主的な返還は、自らが申し出て返還を行う場合や、実地指導において指摘されたことについて修正した結果で生じる返還するケースが当てはまります。

 

 通常、悪質でないケースであれば、実地指導において違反が見つかっても即処分とはならず、是正するための猶予期間が与えられます。

 この間に算定が難しい加算を取り下げることも可能です。

 しかし、不正の可能性が高いと判断されれば、実地指導中に監査に切り替わることもあります。

 そうなれば処分は逃れられません。

 

 自主的に返還する場合には処分までは受けずに済むケースが多いため、「間違いに気づいても放置せずにすぐに修正する」姿勢が何よりも大切です。

 施設の管理者だけでなく、会計担当者についても制度についてしっかりと理解しておく必要があります。

 

 

 

不正による処遇改善加算返還の事例

では、実際に不正請求と判断された事例を見てみましょう。

 

事例1:徳島県のヘルパーステーション

 内容:処遇改善実績報告書に、実際の賃金額とは異なる虚偽の内容を記載して、加算を不正に請求した。

 処分:

  • 不正に受給した介護報酬の返還
  • 事業書指定取り消し

 

事例2:北海道A市の法人が運営するグループホーム7事業所

 内容:処遇改善加算を一部しか職員の給料として支払わなかったのにも関わらず、実績報告書には虚偽の記載をしてそれを隠蔽していた。

 不正受給額:約1800万円

 処分:

  • 不正に受給した介護報酬の返還
  • 3か月月間新規利用者の受け入れ停止、介護報酬20%減額。

 

 事例1については、処遇改善加算の不正以外にも、行っていないサービスの報酬を不正に請求し、記録を改ざんするなど、数多くの悪質な不正があり、指定取り消しとなったものです。

 事例2については、処遇改善加算についてのみの不正ですが、やはり金額が大きなものとなっています。

 この事例は新聞などでも大きく取り上げられており、基準や書類審査の厳格化の流れにつながりました。

 

 

 

まとめ

 いかがでしたでしょうか?

 不正な行為は慎まなければならないことはもちろんですが、制度に対する正しい理解と知識を持つことも重要です。

 知らなかったでは済まされません。

 

 また、業務が忙しいからと、必要な書類の作成を後回しにしないことも大切です。

 処分を受けると、入るはずのお金が入らないばかりでなく、イメージダウンによるダメージも大きいものとなります。

 事業所を利用しているご利用者と職員を守るためにも、襟を正して業務に当たりましょう。

 

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処遇改善加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

 

(専門家監修:矢野文弘 先生)

機能訓練指導員に関する加算にはどんなものがあるの?

 今回は、機能訓練指導員に関して、所定の要件を満たすことによって修得できる、個別機能訓練加算について解説いたします。

 個別機能訓練加算については、(Ⅰ)と(Ⅱ)がありますが、これは機能訓練指導員の配置の仕方等によって修得できる加算が変わるという特徴があります。

 また、機能訓練指導員はどうやって資格を保持することができるのかなどについても解説していきますので、ぜひ参考になさってください。

 

 

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個別機能訓練加算の加算要件

 個別機能訓練加算には(Ⅰ)と(Ⅱ)があります。

 機能訓練指導員の配置の仕方や、リハビリを行う目的、また訓練の内容などによって変わってきます。

 それぞれについて解説していきます。

 

個別機能訓練加算(Ⅰ)

  • 単位数:46単位/日
  • 目的:座る、立つ、歩く等の身体機能の維持と向上
  • 訓練内容の選定:複数種類の機能訓練項目を準備し、項目を選択する際は機能訓練指導員が利用者を支援する。
  • 人員配置:常勤の理学療法士等1名が機能訓練指導員のみとして従事。なお、提供時間内終日にわたり配置されていること。
  • 実施の範囲:グループに分かれて行う。(具体的人数の記載なし)
  • 実施者:機能訓練指導員等が実施
  • 実施環境:記載なし

 

 個別機能訓練加算(Ⅰ)の目的は身体機能の維持と向上となっており、自分でベッドから立ち上がる、車いすを自走するなど、単純な一つの行為を達成することが目標となります。

 訓練の実施者については機能訓練指導員等となっており、理学療法士等の資格を持っ

た者でなくても、介護職員や生活相談員が行うことも可能です。

 機能訓練に関して、助言をするような立場にあると言えるでしょう。

 

個別機能訓練加算(Ⅱ)

  • 単位数:56単位/日
  • 目的:①身体機能だけでなく、精神の働きも含んだ心身機能の維持と向上        ②ADL、家事、職業能力や屋外歩行といった生活行為全般である活動                ③家庭や社会生活の中で役割を果たす「参加」など生活機能の維持と向上
  • 訓練内容の選定:ADLだけでなくIADLも考慮し、可能な限り自立していけるような生活機能の維持と向上に関しての段階的な目標を設定する。
  • 人員配置:機能訓練の実施する時間内に勤務し、機能訓練指導員のみとして従事する職員が1名必要。
  • 実施の範囲:個別対応もしくは5名程度以下である。
  • 実施者:機能訓練指導員が直接実施する。
  • 実施環境:浴室設備や調理設備、備品等を備えており、実践的な環境

 

 個別機能訓練加算(Ⅱ)の目的は生活機能の維持と向上とされており、例えば週に一度カラオケに出かけるなど、複数の行為が組み合わさった活動を達成する目標を設定する必要があります。

 カラオケに出かけるためには、着替えて、整容を行って、カラオケの場所まで移動する、皆さんと交流するなどの一連の流れが組み合わさっていることが理解できると思います。

 

 また、実施の範囲において、個別対応か5名程度以下と決められています。

 そのため、グループで行われる個別機能訓練加算(Ⅰ)よりも、個別のニーズに即した内容の濃い訓練が実施されると解釈することができます。

 施設の調理場を使って料理をするなど、実際の生活において役立てられるような内容となっています。

 機能訓練で行ったことを、自宅に帰ってもできるような支援の在り方が求められるでしょう。

 そして生活機能が維持・向上することで、社会との繋がりが持て、精神的にも明るくなるなどといったことに繋げていければ、なおよいと思われます。

 

 

機能訓練指導員になれる資格

 ここでは、個別機能訓練を行うことができる機能訓練指導員について、資格を紹介します。

 機能訓練指導員となれるのは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、准看護師、柔道整復士、あん摩マッサージ指圧師のいずれかの資格を持つ者が行えます。

 ただし、看護師が機能訓練指導員として配置された場合、看護業務は同時に行うことができません。

 機能訓練指導員として配置された看護師とは別に、看護業務を行う看護師を配置する必要があります。

 なお、個別機能訓練加算(Ⅰ)については実施者が機能訓練指導員等となっており、上記に示した有資格者だけでなく、介護福祉士や生活相談員等が行うことも可能となっています。

 

機能訓練指導員の配置による違い

 機能訓練指導員の配置の仕方によっては、受けられる加算が違うため、加算が受けられない場合があります。

 機能訓練指導員が常勤の専従である場合、個別機能訓練加算(Ⅰ)の算定要件を満たすことになります。

 必ずしも常勤専従の機能訓練指導員が訓練を実施する必要はありませんが、訓練を実施する時間帯には常勤専従の機能訓練指導員が配置されていなければなりません。

 

 ただし、個別機能訓練計画の見直し等のため、機能訓練指導員が利用者の居宅を訪問しなければならない時は、プログラムに支障がない範囲において、配置時間として含むことが認められています。

 また機能訓練指導員として、病院や訪問看護ステーションと連携して看護職員を充てることは認められていません。

 一方非常勤の専従の場合は、機能訓練を実施する時間帯に勤務することが可能であれば、個別機能訓練加算(Ⅱ)を算定できることになります。

 また、個別機能訓練加算(Ⅰ)において、常勤の理学療法士等が欠勤、あるいは遅刻や早退となった場合は、仮に非常勤の理学療法士等が配置されていたとしても算定が不可となります。

 

 一方、個別機能訓練加算(Ⅱ)については、機能訓練指導員が実施時間内に勤務することができれば、遅刻や早退をしても算定は可能とされています。

 次に、個別機能訓練加算(Ⅰ)を算定している利用者に対して、個別機能訓練加算(Ⅱ)に係る訓練を実施した時は、同一日であっても算定は可能です。

 但し、個別機能訓練加算(Ⅰ)に従事した常勤専従の機能訓練指導員は、個別機能訓練加算(Ⅱ)に係る機能訓練指導員としては従事できません。

 別に機能訓練指導員の配置が必要となります。

 

 それでは、なぜ機能訓練指導員の配置の違いによって、加算が変わってくるのでしょう。

 これについては、個別機能訓練加算(Ⅰ)が身体機能の維持と向上を目的としているのに対して、個別機能訓練加算(Ⅱ)は心身機能だけでなく、ADLやIADLへの働きかけ、社会参加の実現などといった、生活機能の維持と向上を目的としているという違いがあるからです。

 個別機能訓練加算(Ⅰ)では目が届きにくく対応しきれない訓練内容や、個別や

少人数の訓練でないと効果が望めないような内容を行った場合、個別機能訓練加算(Ⅱ)で算定しようという考え方になります。

 

 

まとめ

 今回は、個別機能訓練加算の加算要件について解説しました。

 個別機能訓練加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いについて理解できたと思います。

 個別機能訓練加算(Ⅰ)では身体機能の維持と向上を目的としているのに対して、個別機能訓練加算(Ⅱ)では生活機能の維持と向上を目的としています。

 要介護者が、長年住み慣れた自宅での生活を継続できるよう、適切な機能訓練が実施されるようにしたいものです。

 そして、それぞれの算定要件を満たすことで、正しく加算が受けられると良いですね。

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個別機能訓練加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

 

(専門家監修:矢野文弘 先生)

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