介護支援ブログ

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小規模多機能型居宅介護の運営基準とは 経営維持や開業のための情報を紹介します  

 

皆様は「小規模多機能型居宅」という施設についてお聞きになったことがあると思います。近所の(認知症のある)高齢者が、一つの家に集まって過ごし、時には泊まっていったり、体調や状況によってはしばらく滞在したりできる施設です。いつも同じ顔触れのスタッフや仲間と、住み慣れた地域で家庭的雰囲気の中で安心して過ごすことが出来るため、特に認知症をもつお年寄りにはとても良い施設だと言われています。

そのメリットに着目し、高齢者が住み慣れた地域で、家族や地域の人たちと共に安心して生活できる場所を作り、在宅での生活を支援することを目的に、小規模多機能居宅住宅介護が設立されました。

小規模多機能居宅介護から介護事業への参入を検討されている皆様、健全な経営・財務状況を実現したいと考えている介護事業者の皆様は、ぜひこの記事をご覧ください。

 

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小規模多機能型居宅介護とは?

小規模多機能型居宅介護は平成18年度の介護保険の改正で、新設された地域密着型介護サービスです。介護保険制度以前からの「宅老所」のメリットに着目してできた在宅介護サービスであると言われています。

小規模多機能型居宅介護とは、自宅で生活している要介護者が、一定の小規模多機能介護事業所から、通所サービスを基本とし、心身の状態や希望に合わせて、訪問サービスや泊まりサービスなどの、介護サービスを組み合わせて利用するサービスです。

そのため、いつもの場所で、顔なじみのスタッフからケアを受けることができることから、介護度が上がったとしても安心して在宅生活を送れることを目的としてできた介護サービスと言えます。

 

運営基準と注意したい点

小規模多機能型居宅介護に関する厚生労働省令のなかで、運営において特に重要な点をわかりやすくまとめていきたいと思います。同時に注意したい点も記載していますので、ご覧ください。

 

利用料について

小規模多機能型居宅介護の介護保険上の利用料金に関しては、基本サービス料の中に、通所サービスや宿泊サービス、訪問サービスの費用が含まれており、どのサービスを何度利用しても、介護保険上のサービス料金は変わりません。しかし、下記に記載している食事代などのサービス利用料金以外の料金を、利用者から受領することができます

① 利用者の希望により、通常の事業の実施地域以外の地域に居住する利用者に対して行う送迎に要する費用

② 利用者の希望により、通常の事業の実施地域以外の地域の居宅において訪問サービスを提供する場合は、それに要した交通費の額

③ 食事の提供に要する費用

食事の提供に関する費用の中には、食材料費及び調理にかかる費用が含まれます。

④ 宿泊に要する費用

宿泊に要する費用の中には、室料や光熱費が含まれます。

室料の算定の際には、

  • 建設費用、修繕や維持費用、公的助成の有無 
  • 近隣地域に所在する類似施設の家賃や光熱水費

上記を勘案して算定することが望ましいです。 

⑤ おむつ代

⑥ 上記以外に、介護の提供にあたって日常生活においても必要になるであろうものに関する料金。

 

また、この項目に関してはあいまいな表現で記載することが禁止されています。

 料金に関しては、項目ごとにきちんと説明をした後、利用者や家族に了承を得る必要があります。介護保険サービスで、食費や宿泊費が別途必要なものは少ないため、特にきちんと説明する必要があるでしょう。また、料金を決める際には近隣の疑似施設等の料金と比べて大差がないかなど、比較検討することも必要です。

 

サービスの評価について

小規模多機能居宅介護では、客観的な事業評価を得るために、各都道府県の定める基準によって自己評価を行うことが必要です。自己評価の内容は、利用者並びにその家族に報告するほか、外部にも公開する必要があります。(わかりやすい場所への掲示、インターネット上での公表、町村窓口、地域包括支援センターに置いておく方法など)

さらに、その結果を運営推進委員会に報告し、その内容をもとに運営推進会議を開催し、その意見を反映することで常にサービスの質を改善・向上させることが求められています。その内容も、記録を作成し公表する必要があります。

→運営推進会議とは、上述した客観的な評価を得るために実施される会議のことです。だいたい2ヶ月に1回の開催を推奨され、運営推進協議会員の参加により行われます。運営推進協議会員とは利用者や利用者の家族、地域住民の代表、事業所が所在する市区町村の職員、地域包括センターの職員、小規模多機能型居宅介護の有識者で構成されています。

  

サービスの提供、回数について

小規模多機能型居宅介護は通所サービスを基本としたサービスのため、事業所での通所サービスの利用者数が著しく少ない状況を作ってはいけません。著しく少ないという目安は、登録定員の3分の1以下の利用が続く状態を指します。例えば、登録利用者数が25人であるとすれば、通所サービス利用者数8人以下が続く状態です。

また、ほぼ毎日泊まりサービスを利用する人が増えることにより、他の利用者が泊まりサービスを利用したい時に利用できない、といった状況を作ってはいけません。他の利用者も利用できるように、サービスの調整を行う必要があります。

 

利用者側も1ヶ月のうちに利用するサービスの回数は明記されていません。利用者の心身の状態や利用者と家族の希望・状況に柔軟に対応できるように、回数等の設定がされていないのです。

しかし、厚生労働省令では「適切なサービスを提供しなくてはならない」と義務づけられています。適切なサービスとは通所介護、宿泊サービス、訪問サービスを合計して、だいたい週4回以上行うことが目安とされています。

その際、小規模多機能型居宅介護の訪問サービスは身体介護に限られないため、利用者宅を訪問し見守りの意味で声掛けを行った場合も訪問サービスの回数に含めることが可能です。

さらに、「事業者はサービスを利用していない日も、何らかの形で関わることが望ましい」としています。具体的には、電話連絡による見守りなども含まれています。

 

これらのサービスが利用者にとって適切であるか、サービスの利用状況について運営推進委員会で報告し、評価を受ける必要があります。

 

 

居宅サービス計画の作成

小規模多機能型居宅介護の利用を開始した場合、今までの介護支援専門員を利用する小規模多機能型居宅介護事業所の介護支援専門員に変更、新たに居宅介護サービス計画を作成する必要があります。小規模多機能型居宅介護の契約をした場合、他の事業所からの訪問介護や訪問リハビリなどのサービスを受けることができなくなる点も注意が必要です。

 

定員について

事業者は、あらかじめ定められている通所サービスと泊まりサービスの定員を超えてサービスを提供することはできません。(例えば、契約利用者数25人の事業所では、通所サービスは15人以下、泊まりサービスは9人以下と決められています。)

しかし、利用者の状況や希望等により特別に必要と認められた際には、一時的に定員を超えることが認められています。例えば、通所サービスで全員参加のイベントをする際や、緊急での宿泊サービスが重なった際などです。

 

小規模多機能型居宅介護は、サービスに柔軟性を持たせることができるというメリットがある反面、サービス回数など明確に決められていないことが多いため、注意すべき点も多いです。

 

次に、サービスを提供するにあたって基準違反になりやすい注意点をまとめていきたいと思います。

 

小規模多機能型居宅介護の運営基準違反について

ここでは、小規模多機能型居宅介護で運営基準違反が起こりやすい項目について、例を挙げながら説明していきたいと思います。

 

運営基準違反とは?

厚生労働省発令の介護保険サービスの運営基準に定められた項目を満たすことなく、サービスを提供し続けると運営基準違反となります。もし違反が発覚すると、介護サービス料金の返還はもちろんのこと、事業所の指定の取り消しなどの重大な罰則につながるため、注意が必要です。

 

小規模多機能型居宅介護において運営基準違反の起こりやすい例 

例1)通い、訪問、泊まりサービスのカウント

小規模多機能型居宅介護は包括請求のため、請求の際にはそれぞれのサービスの利用回数を申告する必要はありません。そのため、サービスの回数を明確にする必要がないと思われがちですが、記録の保管の観点からも、サービスが適正に行われているかの評価の観点からも、明確に管理する必要があります。

介護提供記録に関しては5年間の保管が義務付けられており、実地指導や監査の際に保管されていないことが発覚すると罰則を受けることとなります。サービス提供表の合意が行われていない場合にも同様に重い罰則があるので、注意が必要です。

運営基準をご説明した際に、「1週間に4回以上のサービスの提供が必要」と記載しましたが、これも行われていない場合には基準違反となり、減算の対象となります。過少サービス減算と呼ばれており、事業所利用者全員に70%の介護報酬カットとなってしまいます。それを防ぐためにも、きちんとカウントして記録に残しておく必要があります。

泊まりと通いサービスのカウントの基準は、事業所の運営規定に定められたサービス提供時間で判断されます。通い時間外に通いがあった場合は泊まりと判断されます。時間外であれば短時間の利用であっても泊まり人数が増えてしまうため、泊まり人数の規定違反となっていないか、また、介護職員の人員不足にも注意する必要があります。

 

例2)利用者が入院した場合

小規模多機能型居宅介護は、利用者が1度も利用をしなかった月でも算定することは可能ですが、利用者の入院などにより長期にわたって利用が難しいと予見できた場合には、必ず一旦契約を終了して、利用者への負担を軽減することが求められています。これも不正が発覚した際には、サービス料の返還などの措置が取られてしまいます。

 

例3)介護職員の人員不足

通いサービスにおいては、利用者3人またはその端数を増すごとに常勤換算で1人の介護職員の配置が必要となります。その数の1割を超えて減少した場合には、介護報酬の減算の対象となります。通いサービス利用者も日によって変化があり、急な利用も考えられるため、あらかじめ人員配置数に注意が必要です。

 

このように、記録の不備などの基本的な運営基準違反の他にも、小規模多機能型居宅介

護に特異的な基準違反が起こりやすいことがおわかりいただけたかと思います。介護に柔軟性があるがゆえにイレギュラー事態が起こりやすいというデメリットにも、注意しましょう。

 

おわりに

この記事では、小規模多機能型居宅介護を運営するにあたって、特に注意しておかなければならない運営基準について説明いたしました。利用者にとってより良い介護を提供するためにフレキシブルな対応ができる分、注意すべき点が多いこともおわかりいただけたのではないでしょうか?

しかし、これから超高齢化社会を迎えるにあたって、国としてだけではなく地域としても高齢者を考えていく方針が強く打ち出されており、小規模多機能型居宅介護がますます脚光をあびてくると思われます。利用者にとっても、住み慣れた地域に根差した小規模多機能型居宅介護事業所は魅力的であると思われます。この記事が、小規模多機能型居宅介護に興味を持たれるきっかけになりましたら幸いです。

 

最後までお読みくださって、ありがとうございました。

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運営基準について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

処遇改善加算の実績報告を適切に行うためにすべきことは

 

介護職員処遇改善加算(以後、処遇改善加算)の申請には、たくさんの書類が必要であり、皆様の頭を悩ませておられることと思います。さらに、平成29年度からキャリアパス要件に新たな内容が盛り込まれる予定になっています。それまでに、現行の処遇改善加算の実績報告をしっかりマスターしておきたいものです。

この記事では、処遇改善加算の実績報告に必要な書類等の申請方法を詳しく説明したいと思います。処遇改善加算を適切に算定、報告するにあたり不安を抱えている介護事業者の皆様は、ぜひこの記事をご覧になってください。

 

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処遇改善加算の実績報告とは?

処遇改善加算とは、

  • 介護職員の離職原因の1つである賃金を改善すること
  • 介護職員の賃金を改善するための環境を整えること

主にこの2点の改善をすることを目的とした加算です。

そのため、処遇改善加算を算定するためには、その目的に沿った要件(キャリアパス要件ⅠⅡⅢ、職場環境等要件)を満たす必要があり、要件をどれだけ満たしているかによって加算額が変わってきます。

 

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そのため、事業者はどの加算を受けたいのか申請する前段階として、要件を満たすことができるような制度づくりをする必要があり、それを文書化、申請し承認を受けることで加算が算定されることとなります。

 

もちろん、制度をつくっただけではいけません。それを1つの年度を通して実行し、ご自身で作成した計画書を遂行したという書類を提出しなければなりません。これが、実績報告になります。1年に渡って受け取った加算額の詳細を報告し、不備や不正がないか確認してもらい、承認を得るために行います。

 

それを踏まえたうえで、実績報告の手順・必要な書類を詳しく説明します。

 

実績報告の手順と必要な書類

提出書類は?

介護職員処遇改善実績報告書及び、添付書類の提出が必要です。

※様式は、厚生労働省ホームページからダウンロードすることができます。

介護職員処遇改善加算に関する基本的考え方並びに、事務処理手順及び様式例の提示について

各都道府県で独自のフェイスシートや処遇改善実績報告書を作成している地域も多いため、申請する都道府県の窓口に確認することやホームページをチェックすることを心がけましょう。

 

提出期限は?

介護事業者は、各事業年度における最終の加算の支払いがあった月の翌々月の末日までに、都道府県知事に対して、介護職員処遇改善実績報告書を提出しなければなりません。介護保険の支払いが2ヶ月後であることを考えると、一般的な年度末(3月末)までの支払いは5月末になされるため、7月末までに実績報告をすることになります。

 

提出先は?

提出先は都道府県知事宛ですが、実際の窓口は保健福祉課等が多いようです。

各都道府県によって異なりますので、都道府県のホームページ等で確認が必要です。

地域密着型サービスについては、各区市町村にも実績報告書の提出が必要となりますので注意しましょう。

 

提出方法は?

提出方法も都道府県によって異なります。郵送のみに限られている地域もありますの

で、提出先と一緒に調べておくとよいでしょう。

 

それでは実際、処遇改善実績報告書の内容はどのようなものでしょうか?

 

 

実績報告の記入項目と記載例

ここでは、厚生労働省の実績報告書を例に、各項目の内容を詳しく説明していきます。

 

 ①加算の総額

年度内に受け取った加算の総額を記載します。

加算の総額は

(基本サービス費用+加算-減算)× サービス別加算率 

上記の式で求めることができます。

区分支給限度額以上のサービス費用がある場合は、それもサービス費用に含めて計算します。サービス別加算率は、以下の表をご参照ください。

 

サービス 加算Ⅰ 加算Ⅱ 加算Ⅲ 加算Ⅳ 加算Ⅴ
訪問介護
夜間対応型訪問介護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
13.70% 10.00% 5.50% 加算Ⅲの90% 加算Ⅲの80%
訪問入浴介護 5.80% 4.20% 2.30%
通所介護
地域密着型通所介護
5.90% 4.30% 2.30%
通所リハビリテーション 4.70% 3.40% 1.90%
特定施設入居者生活介護
地域密着型特定施設入居者生活介護
8.20% 6.00% 3.30%
認知症対応型通所介護 10.40% 7.60% 4.20%
小規模多機能型居宅介護
看護小規模多機能型居宅介護
10.20% 7.40% 4.10%
認知症対応型共同生活介護 11.10% 8.10% 4.50%
介護老人福祉施設
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
短期入所生活介護
8.30% 6.00% 3.30%
介護老人保健施設
短期入所療養介護(老健)
3.90% 2.90% 1.60%
介護療養型医療施設
短期入所療養介護(病院等)
2.60% 1.90% 1.00%

 

ここに記載されているように、サービス内容やキャリアパス要件等の取得状況により、加算率が異なります

また、複数事業所を所有している場合には全事業所の合計金額を記載します。他県の事業所も同時に申請する際には全国の合計金額を記載します。(他事業所・他県の事業内容は、別紙様式に記載し添付する必要があります。)

 

 ②賃金改善実施期間

  実施した期間を記載します。

 

 ③(②の期間における)介護職員常勤換算数の総数

介護職員の常勤換算数とは、常勤介護職員、非常勤介護職員の勤務時間の総時

間数を、常勤介護職員1人の勤務すべき時間数で割ることで算出します。

例)常勤介護職員の1ヶ月の勤務時間が160時間、介護職員全体の勤務時間の総時間数が800時間であった場合

800÷160=5

となり、常勤換算数は5となります。

月ごとに算出したのち、期間内の総数を計算します。

ここで含まれる介護職員とは、給付の対象となるサービスを介護利用者に直接提供している介護従事者のみです。

 

 ④(②の期間における)介護職員に支給した賃金総額

②の期間に介護職員全員に支給した、賃金総額を記載します。 

 

 ⑤介護職員一人当たり賃金月額

④の総額を、②の常勤換算数で割った数値を記載します。

 

 ⑥(②の期間内に)事業所で実施した賃金改善の概要

改善した給与項目(基本給・賞与・諸手当等)について記載し、その内容を詳しく説明します。その項目をいつ、誰に、どのようにというように記入するとわかりやすく記載できるでしょう。

 

例)

常勤介護職員の基本給を2000円~5000円の間でベースアップ。非常勤介護職員の時給を60円アップした。

○月の賞与を、常勤介護職員は10000円、非常勤介護職員は5000円上乗せした。

 

 ⑦賃金改善所要額

⑥に必要であった費用の総額を記載します。この際に、①で記載した加算の総額と比較してみて、必ず⑦が①を上回っていなければなりません。

 

 ⑧介護職員一人当たり賃金改善月額

⑦の額を③で割ったもの。

 

上記が、介護職員処遇改善実績報告書の内容となります。これに加えて、①⑦には添付書類が必要になります。

①は指定の書式がありますが、⑦は任意の書式で問題ありません。

⑦の項目は、⑥で述べた積算の根拠基準を詳しく説明する文章が必要になります。

 

実績報告の注意事項 

実績報告書類を作成するにあたって、いくつか注意する点があります。これを怠ってしまうと、加算が算定できないことはもちろん、法的に罰せられることにもなりかねないため、注意が必要です。

 

文書の保管期間

介護職員処遇改善実績報告書、その添付書類は2年間保管しなければなりません

 

実績報告をしなかった場合、提出期限に遅れた場合

介護職員処遇改善実績報告書を期限までに提出しなかった場合、全額返還となります。

 

虚偽報告、不正手段による算定をした場合

処遇改善加算の請求を不正に行った場合には,支払われた加算額の全額返還を言い渡されることや指定取消となることがあります。

 

おわりに 

今回は、介護職員処遇改善加算の実績報告について注意点を含めて説明してきました。実績報告の書類には期限や内容を間違えてしまうと事業所の損害となってしまうことがありますので、慎重に正確に作業する必要があります。そのような大変な作業の中、この記事が皆様の手助けになりましたら幸いです。介護職員処遇改善加算を確実に受け取り有効に使うことで、介護職員の処遇やモチベーションが向上し、より良い介護が提供できることを願っています。

 

最後までお読みくださって、ありがとうございました。

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処遇改善加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

個別機能訓練加算Ⅰとは? 算定要件やⅡとの併用について説明します

住み慣れた地域での在宅生活を支援するため、通所介護(デイサービス)においても、利用者の状況に合わせた個別のリハビリの重要性が高まっています。個々のニーズにあったリハビリを行うと、個別機能訓練加算が算定できることは皆様ご存知かとおもいます。では、どのような手順で、どのようなリハビリを行えば算定できるのでしょうか?

この記事では、機能訓練加算Ⅰについて、概念や算定要件を詳しく説明し、Ⅱとの違いや、Ⅱとの併用についても説明したいと思います。

通所介護において個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱを適切に算定し、経営・雇用の安定化を目指したい介護事業者の皆様は、ぜひこの記事をご覧ください。

 

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個別機能訓練加算Ⅰとは?

概念

厚生労働省令では、

個別機能訓練加算(Ⅰ)は、常勤専従の機能訓練指導員を配置し、利用者の自立の支援と日常生活の充実に資するよう複数メニューから選択できるプログラムの実施が求められ、座る・立つ・歩く等ができるようになるといった身体機能の向上を目指すことを中心に行われるものである。

[出典:厚生労働省 通所介護及び短期入所生活介護における個別機能訓練加算に関する事務処理手順例及び様式例の提示について

 

と、個別機能訓練加算Ⅰについて示しています。

これを簡単にまとめると、

「個別機能訓練加算Ⅰは、常勤で専従の機能訓練指導員(※)が利用者の日常生活の充実を目指して、生活基本動作(ADL)の維持・向上を目的として、個別訓練計画に沿いながら行う訓練につく加算である」ということになります。

※機能訓練指導員とは、理学療法士、作業療法士、言語療法士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師のことを指します。以下の文でも同様。

 

適用サービス

 通所介護(デイサービス)

 

サービス単位数

46単位(都道府県知事に届け出た利用者に対して、機能訓練を行った場合)

 

平成27年度の改正による変更点

  • 単位数が42単位→46単位に変更されました。
  • 個別機能訓練計画を策定する際、必ず利用者を居宅訪問した上で完了させることが義務付けられました。また、その後には3カ月おきに利用者の計画を見直すために居宅訪問すること、その際に利用者やその家族に機能訓練内容や現在の状況を詳しく説明をしなければならなくなりました。

 

それでは、個別機能訓練加算Ⅱとの違いは何でしょうか?

 

個別訓練加算Ⅰ・Ⅱの違いは何?

概念の違いは?

個別機能訓練加算Ⅱについて、厚生労働省令では

個別機能訓練加算(Ⅱ)は、専従の機能訓練指導員を配置し、利用者が居宅や住み慣れた地域において可能な限り自立して暮らし続けることができるよう、身体機能の向上を目的として実施するのではなく、①体の働きや精神の働きである「心身機能」、②ADL・家事・職業能力や屋外歩行といった生活行為全般である「活動」、③家庭や社会生活で役割を果たすことである「参加」といった生活機能の維持・向上を図るために、機能訓練指導員が訓練を利用者に対して直接実施するものである。

[出典:厚生労働省 通所介護及び短期入所生活介護における個別機能訓練加算に関する事務処理手順例及び様式例の提示について]

 

と示しています。

これを簡単にまとめると、

「個別機能訓練加算Ⅱは、専従の機能訓練指導員が、単なる身体機能の維持向上だけでなく、地域や家庭で人としてより質の高い生活を送ることを目的として、利用者個々のニーズに合った生活機能に対するリハビリを、個別機能訓練計画に沿いながら行うことに付加する加算である。」ということになります。

 

すなわち、個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱ概念の違いは、「身体機能の維持・向上を目的とするもの」と、「生活機能の維持・向上を目的とするもの」の違いということになります。

 

サービス単位数の違いは?

56単位(都道府県知事に届け出た利用者に対して、機能訓練を行った場合)

→個別機能訓練加算ⅠよりもⅡのほうが、単位数が多いです。

 

個別機能訓練加算Ⅰの算定要件とは?

個別機能訓練加算Ⅰを算定するために、必要な条件は何でしょうか?厚生労働省令に記載されている内容と、実際の具体的な例を交えて説明したいと思います。

 

人的要件

通所介護を行う時間帯を通して、

  1. 専従で機能訓練指導員として動く
  2. 常勤
  3. 理学療法士、作業療法士、言語療法士、看護職員、柔道整復師または、あん摩マッサージ指圧師
  4. 1名以上配置

上記1~4すべての条件を満たすように人員を配置する必要があります。

→専属で従事する常勤の職員が必要なため、非常勤の職員では要件を満たすことはできません。さらに、看護職員が機能訓練指導員となる場合には、看護師であっても機能訓練指導員として算定されるため、その日の看護職員としての人員基準の算定には含まれません。

 

個別機能訓練計画に関する要件

機能訓練指導員等が、利用者の居宅を訪問した上で利用者や家族、その他様々な環境の状況を加味して、個別機能訓練計画を作成する必要があります。その後も少なくとも3ヶ月に1回は利用者の居宅を訪問した上で、利用者や家族に対して、機能訓練の内容や状況を説明し、訓練内容の見直しを行わなくてはなりません。

→利用者の状況を把握するため居宅訪問チェックシート等を用いて、誰がチェックをしても同じように評価が出来るようにする必要があります。さらに、少なくとも3か月に1回は個別機能訓練計画の評価・見直しを行う必要があります。その上で居宅を訪問し、その内容を利用者や家族に説明し、サイン等で同意を得たことを明確にしておく必要があります。

 

個別機能訓練計画の作成・評価に関する要件

・機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活指導員、その他利用者に関わる職種が協働して、利用者ごとに個別機能訓練計画を作成し、計画に基づいた機能訓練を行っている必要があります。

→居宅等で得た情報も加味して、関係職種が協働しながら、利用者ごとに、目標・実施内容・実施時間等を記載した個別機能訓練計画を作成する必要があります。そして、これにもとづいて訓練を行い、実施方法・効果・時間等の評価を利用者個々に記載する必要があります。

 

個別機能訓練実施に関する要件

・実際に個別機能訓練を実施するときには、何種類かの機能訓練のメニューを準備します。メニューの選択には利用者のADLや生活の状況に合ったものを一緒に選ぶなど、意欲が湧くように配慮して心身の状況に応じた機能訓練を行う必要があります。

→数種類の機能訓練の項目を用意し、利用者本人にどの訓練を行いたいかを選択してもらったうえで、選択された項目ごとのグループにわけて活動を行う必要があります。個別機能訓練加算Ⅰでは、グループ人数の制限は設けられていません。

 

個別機能訓練加算Ⅰ、Ⅱの併用算定はできるの?

ここまで紹介した通り、個別機能訓練加算ⅠとⅡは基本的な目的や趣旨の違う加算となります。

そのため、個別機能訓練加算ⅠとⅡは併用算定することが可能です。

しかし、併用算定する場合は、個別機能訓練加算ⅠとⅡそれぞれに個別機能訓練計画が必要です。そして、同日に個別機能訓練加算ⅠとⅡを算定したい場合は、同じ機能訓練指導員では算定できないため、注意が必要です。(個別機能訓練加算Ⅰは、専属の機能訓練指導員が必要なため、個別機能訓練加算Ⅱの指導員とかけ持つことはできないからです。)

 

個別機能訓練加算Ⅰの計画書制作の手順

それでは、実際に個別機能訓練加算Ⅰの計画書を作成する手順を説明していきます。

 

 ①利用者の日常生活や、ニーズを把握する。

まず居宅を訪問して、利用者の居宅での生活状況(ADL、IADL、起居動作等)を確認します。ニーズ、ADL、IADLの確認にはチェックシートを利用し、誰が訪問してももれなく同じ項目をチェックできるようにすると効率よく計画の作成が行うことができます。

かかりつけの医師からは、利用者のこれまでの医療提供の状況について情報を得た上で、訓練にあたっての注意事項はないか確認します。

介護支援専門員からは利用者や家族の意向、総合的な支援方針、目標(長期・短期)、問題の有無、サービス内容などについて情報を得ます。

 

 ②個別機能訓練開始時におけるアセスメント・評価、計画の作成、説明・同意等

①で把握した利用者のニーズと居宅での生活状況を参考に、多職種協働でアセスメントと評価を行い、個別機能訓練計画を作成します。計画書には、目標、実施プログラム内容、実施時間の記載が必須です。

個別機能訓練計画は、通所介護においては、個別機能訓練計画に相当する内容を通所介護計画の中に記載することで、個別機能訓練計画の作成に代替することができます。

また、居宅サービス計画、通所介護計画及び短期入所生活介護計画と連動して、これらの計画の内容にそった、個別機能訓練計画を作成することが重要です。

 

 ③利用者や家族への説明と同意

個別機能訓練計画の内容については、利用者やその家族に分かりやすく説明を行い、同意を得ることが必要です。その際には、個別機能訓練計画の写しをお渡しする必要があります。

上記を行ったうえで、実際に個別機能訓練を実施・評価します。そして、3か月ごとに1回以上(利用者の心身の状態変化等により、必要と認められる場合はその時に)、個別機能訓練計画の進捗状況等に応じて、利用者やその家族の同意を得た上で、訓練内容の見直し等を行い、同じように文章を交わす必要があります。

 

おわりに

この記事では、個別機能訓練加算Ⅰについて、基本的な概念から、計画の作成までの内容を紹介してきました。これならご自身の事業所でもできる!と思っていただけましたら幸いです。通所介護事業所の皆様は、日々、利用者様一人一人の状況を見ながら、レクリエーションや機能訓練の方法に心を砕いておられることと思います。その思いが、加算という形で評価されると、さらにモチベーションも上がるのではないでしょうか?

 

最後までお読みくださって、ありがとうございました。

この記事が参考になった!と思われる方、シェアしてくださると嬉しいです。

 

個別機能訓練加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

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