介護支援ブログ

介護制度について分かりやすく解説しています。介護に関っている全ての方々に役立つ総合介護情報サイト目指しています。現在は主に介護職員処遇改善加算、キャリアパス要件、介護保険施設等の実地指導について執筆中です。

サービス提供強化加算とは・通所介護・通所リハの事業者必見

通所介護・通所リハ事業者の皆様の中でも関心の高い、サービス提供強化加算。

基準を満たすことで、サービスの質が保たれた事業所としての評価が受けられます。

今回はそのサービス提供強化加算について詳しく解説していきます。

事業所の運営にぜひご活用ください。

f:id:kaigo-shienn:20170404143713j:plain

サービス提供強化加算とは?

サービス提供強化加算の概要

サービス提供強化加算は、サービスの質が一定以上保たれている事業所を評価するために、平成21年度より設けられた加算のことです。

介護福祉士資格を保持している者や常勤職員、勤続年数3年以上ある者を一定以上雇用していることが、加算の算定要件となります。

サービスの質の向上を図っている事業所を評価するとともに、離職率の低下やキャリアアップを促進することを目的として導入された加算です。

 

この評価の基準は国が定めていて、加算を得るためには、毎年3月に当該年度の雇用状況を都道府県知事へ申請しなければなりません。

評価基準を満たしていると認められた事業所は、サービスを利用する者すべてに対してサービス提供強化加算が算定されることになります。

サービス提供強化加算の背景と目的

その背景には、介護職員の安定的な確保が困難になっていることが挙げられます。

介護職は、他の職種と比較して賃金水準が低い、その専門性が評価されにくいなど、他業種と比べて離職率が高い状況にあります。

そのほかにも、職場の人間関係に問題がある、法人の理念や運営のあり方に不満をもっているなどが離職の要因となっています。

また、介護で働きたいという求職者も減少傾向にあり、慢性的な人手不足が懸念されています。

そのため、介護職員の処遇改善等を行い、安定的に人材を確保していくこと目的として、離職率の低下を防いだり、人手不足を解消したりすることに繋げていくことが期待されています。

 

平成27年度に行われた介護報酬改定において、介護職員に対する処遇改善への取り組みを一層強化するため、サービス提供強化加算を拡充する動きがありました。

介護福祉士の資格を有している者を多く配置している事業所への加算が、増額となっています。

例を見ますと、通所介護事業所において介護福祉士の割合が全体の40%以上配置されている事業所が最上位区分とされていましたが、改定してからは、介護福祉士が50%以上配置されている事業所に対しての加算が新設されています。

単位数

単位数については、要介護と要支援それぞれについて以下の通りです。

①要介護(通所介護・通所リハ)

(Ⅰ)イ 18単位/回

(Ⅰ)ロ 12単位/回

(Ⅱ) 6単位/回

②要支援(通所介護・通所リハ)

(Ⅰ)イ 要支援1 72単位/人・月

     要支援2 144単位/人・月

(Ⅰ)ロ 要支援1 48単位/人・月

     要支援2 96単位/人・月

(Ⅱ)  要支援1 24単位/人・月

     要支援2 48単位/人・月

サービス提供強化加算の算定要件

それでは、サービス提供強化加算の算定要件について見ていきましょう。

さきほどの単位数と照らし合わせながら確認してください。

算定要件の前提条件として、人員基準を満たしていることと、定員超過がないことの二つがあります。

以上を満たした場合、通所介護や通所リハにおいては、下記に示す区分ごとの要件が満たされることによって、加算の取得に繋がります。

 

  • (Ⅰ)イ・・介護福祉士が50%以上配置されている
  • (Ⅰ)ロ・・介護福祉士が40%以上配置されている
  • (Ⅱ)・・3年以上勤続年数のある者が30%以上配置されている

 

また、留意事項については以下のようなものがあります。

  • 同一事業所において、介護予防訪問入浴介護を一体的に行っているところは、サービス提供強化加算の計算も一体的に行います。
  • 勤続年数とは、各月の前の月の末日における勤続年数をいいます。
    例えば、平成27年4月における勤続年数3年以上の者とは、平成27年3月31日時点において勤続年数が3年以上経過している者のことをいいます。
  • 勤続年数の算定については、当該事業所においての勤続年数に加えて、同一法人が経営する他事業所、また病院や社会福祉施設等でサービスを直接利用者に対して提供していた期間も含むことができます。
  • 指定通所介護を直接利用者に対して提供する職員とは、生活相談員や看護職員、介護職員と機能訓練指導員のことを指します。
  • 指定通所リハを直接利用者に対して提供する職員とは、理学療法士や看護職員、または介護職員を指します。
    ただし、1時間以上2時間未満の通所リハを算定している事業所で、柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師がリハビリテーションを行う場合は、これらの職員も含まれます。

サービス提供強化加算のQ&A

この項では、厚生労働省が公開している、「平成27年度介護報酬改定に関するQ&A」に記載れている、サービス提供強化加算についてのQ&Aを要約と解説していきます。

URLを載せておきますので、参考になさってください。

平成 27 年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)

 

問63

職員割合の算出については、常勤換算方法によって算出した3月を除く前年度の平均を

用います。

但し、前年度実績が半年に満たないところについては、届出日の含む前3ヵ月について、常勤換算方法によって算出した平均を用います。

新たに事業を開始した、または事業を再開した事業者については、4カ月目以降に届け出が可能となります。

加えて介護福祉士保有者または実務研修修了者、もしくは介護職員基礎研修課程修了者に関しては、各月の前の月の末日の時点で資格を有しているか、研修家庭を終了している者に限られます。

また届出を行った後についても、直近3カ月間の職員割合については、毎月継続して所定の割合を維持しなければなりません。

さらに、その割合について毎月記録を残し、所定の割合を下回った際は、届出を提出しなければならないとされています。

 

問64

サービス提供強化加算(Ⅰ)イとサービス提供強化加算(Ⅰ)ロの両方の要件を満たしている場合であっても、同時に取得することは認められていません。

この場合、上位であるサービス提供強化加算(Ⅰ)イを取得することとなります。

また、実地指導などによりサービス提供強化加算(Ⅰ)イの算定要件を満たしていないと判断された場合は、都道府県知事等が、支給された加算の一部または全額を返還させることができるとされています。

この場合、サービス提供強化加算(Ⅰ)イの算定要件は満たさないが、サービス提供強化加算(Ⅰ)ロは満たすというケースが考えられます。

その場合においても、一度サービス提供強化加算(Ⅰ)イの返還を行い、さらにサービス提供強化加算(Ⅰ)ロの加算取得のための届出を行う必要がありますので注意しましょう。

 

問65

特定施設入居者生活介護では、介護や看護職員の人員が基準を上回る部分について、上乗せ介護サービス費用として、利用者に費用の負担を求めることが可能とされています。

一方サービス提供強化加算については、介護福祉士等の職員割合など、質の高いサービス提供体制が整備されているかということについて評価され加算を受けることができるため、先の上乗せサービス費用とは別物として考えられます。

そのため、両者を同時に受けることは可能です。

まとめ

今回はサービス提供強化加算について、主に通所介護や通所リハに関する部分を取り上げて解説してきました。

算定要件も明確に決められていますので、見落としなく届出を行って、適正な加算が受けられると良いですね。

この記事が参考になったという方は、シェアをお願いします。

 

 

サービス提供体制強化加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

 

(専門家監修:矢野文弘 先生)

キャリアパス要件の記載例について

介護事業者の皆様も関心の高い介護職員処遇改善加算。

しっかりと加算の算定をすることで、安定した人材を確保しておきたいものです。

今回の記事では、介護職員処遇改善加算算定において必要となる、キャリアパス要件届出書の記載例を解説していきます。

今後の運営にお役立ていただけたらと思います。

f:id:kaigo-shienn:20170523143524j:plain

キャリアパス要件とは

キャリアパス要件の概要

介護の現場において、介護職員の不足だったり、離職率が高かったりすることなどが問題であると指摘されています。その要因としては、賃金や待遇が低い、キャリアアップが望めないような環境にあることなどが考えられています。

それらを改善するため、介護職員処遇改善加算が作られました。

キャリアパス要件とは、その算定要件のことを言います。

 

介護職員にどのような能力があるか、保有している資格や経験などを、適正に評価するためキャリアパス要件があります。

事業所において、介護職員がより長く働きたいと思えるような環境を整えていくことが、キャリアパス要件の目的と言えるでしょう。

キャリアパス要件の種類

キャリアパス要件には3種類あります。以下に解説していきます。

 

  1. キャリアパス要件Ⅰ
    キャリアパス要件Ⅰでは、介護職員がそれぞれに定められた職位によって、その職務の責任や専門性を明らかにして、適正に評価することが定められています。
    同じ職場で、仕事を長く続けようと思えるように、きちんとした評価を行います。
    また、賃金体系についても同様で、どのような形で賃金が支給されるかという制度を整えます。これらの根拠規定を書面で整備し、全ての介護職員に周知していることが必要となります。

  2. キャリアパス要件Ⅱ
    キャリアパス要件Ⅱでは、介護職員の資質向上を目標として、資質向上計画に沿った研修などを実施し、介護職員の能力評価を行います。
    資質向上とは、介護技術・問題解決能力等を意味します。能力評価の方法は、個別面談や上司による評価が考えられます。また、資格を取得しようとする者には、費用の負担等必要な支援を実施します。
    これらを、全ての介護職員に周知していることが必要となります。

  3. キャリアパス要件Ⅲ
    キャリアパス要件Ⅲでは、介護職員の経験や資格に応じた昇給の仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること。とされています。
    昇給などに関しては、事業所ごとの基準であり、判断は様々です。そのため、勤続年数をどれほど積めば昇格となるのか。また、どのような資格を取得することによって昇給するのか、具体的に決めることで介護職員にとって透明性のある分かりやすい内容となります。

キャリアパス要件届出書とは

介護職員処遇改善加算の算定には、介護職員処遇改善加算計画書への記載が必要です。

また、これとは別にキャリアパス要件届出書の提出も行う必要があります。

キャリアパス要件届出書に記載する内容については、以下の通りです。

 

  1. キャリアパスに関する要件について
    キャリアパス要件Ⅰについて、要件を満たしているか、チェックを行います。
    要件Ⅰに該当しなかった場合、要件Ⅱの要件を満たしているかチェックしましょう。
    要件Ⅰが非該当となった場合は、その理由を記入します。
    また介護職員と意見交換を行った上で、資質向上のための目標を記載します。
    目標は具体的に書くようにしましょう。
    この内容について、資質向上のための計画を作成する場合は、計画書を添付します。
    最後に要件Ⅰ、Ⅱのいずにれも該当しなかった場合で、要件Ⅲの要件を満たすかチェックします。
  2. 職場環境等要件について
    続いて、職場環境等要件について記載します。資質の向上・労働環境・処遇の改善とその他内容について、該当する項目があればチェックを行います。

キャリアパス要件届出書の記載例

それでは、キャリアパス要件届出書にどのように記載すればよいのかを、記載例を基に見ていきましょう。具体的な内容を記載している例のURLを載せておきますので、参考になさってください。

【記載例】キャリアパス要件等届出書

キャリアパス要件等届出書

 

まず、申請をする事業所等情報を記載します。

複数の事業所をまとめて届け出る際は、提供するサービス名を記載するか、または別紙一覧表の通りとして別紙様式(事業所一覧)を添付することもできます。

その場合、事業所番号の記入は不要となります。

 

続いてキャリアパスに関する要件について、記載していきます。

要件Ⅰを全て満たしている場合、該当に○をします。満たしていない場合は非該当となります。要件Ⅱを申請する際も、忘れずに非該当に○をつけましょう。

該当する場合、①の任用等要件と②の賃金体系について、就業規則等で何条に規定されているか具体的に記載します。

承認申請の時に該当する根拠となる規定を提出していない場合は、届出書に添付します。

なお、職員への周知書面については、労働基準法上作成義務がない規則であれば、書類の添付が必要になります。作成義務のあるものであれば、添付する必要はありません。

また、この要件を満たすために、就業規則等の改正を行った際は、変更後の就業規則等を添付するとともに、別紙様式5変更届の提出が必要になります。

常時雇用する者が10名未満等、小規模の事業所においては、就業規則作成の義務がないため、内規等によって職員へ周知しておきます。

キャリアパス要件Ⅰの要件に当てはまらず、要件Ⅱに該当する場合は○をつけます。

非該当の場合も同様です。

加えて、要件Ⅰの任用等要件や賃金体系等の要件を満たすことのできない理由を記載します。

例えば、現時点では給与体系を整備しているところであるため困難であるなど、具体的な理由を記載するようにしましょう。

次に、介護職員と意見交換を行って、資質を向上するための目標を書きます。

例えば、利用者の要望に応えるべく良質なサービスを提供するため、介護職員の介護技術や問題解決能力等の向上に努めるというような内容や、事業所全体として資格取得する割合を向上していくという内容などです。

また、それを実現するため、具体的に取り組む内容について記載します。

アの資質向上のための計画に沿って行うことを選んだ場合、研修計画などの計画書を添付することが必要になります。様式は、事業所の任意で結構です。

但し、加算を算定している場合は、計画の添付を省略することができます。

イの資格取得のための支援の実施を選んだ場合は、例えば受講料等費用の負担や研修を受講するために勤務を調整するなど、支援の具体的な内容を記載します。

要件ⅠとⅡに該当しない場合で、要件Ⅲに該当する場合、該当する項目へ○をつけます。

 

続いて定量的要件について該当する項目に○をつけていきます。「処遇全般」や「教育・研修」「職場環境」「その他」と四項目ありますが、全項目の中で○が1つ以上あれば良いとされています。

記載する内容については、平成20年10月以降で、届出日の前の月までに実施した内容となります。例えば、平成29年4月10日に届出る場合は、3月31日までに実施した内容を記載しましょう。

 

次に、定量的要件を実現した際に要した費用の概算額を記載します。

記入する額については、上記と同様に平成20年10月から届出日の前の月までに実施した費用となります。

例えば、施設改修費などといった経費の名称と、それに要した費用の額を書きます。

書面の一番下に署名と押印する箇所がありますが、必ず雇用している介護職員全員に対して周知を行った上で提出しなければなりません。

押印も忘れずに行うようにしましょう。

まとめ

今回はキャリアパス要件の記載例について見てきました。

具体的な記載内容を示しているので、参考にしてスムーズに加算取得のための書類作成と申請を行っていただけたらと思います。

参考になったという方は、シェアをお願いします。

 

 

キャリアパス要件について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

 

(専門家監修:矢野文弘 先生)

実地指導とは?行政処分などを詳しく解説

 実地指導で行政処分が行われる場合をご存知でしょうか?

ここでは、行政処分が行われる場合について紹介していきますのでぜひ参考にしてください。

f:id:kaigo-shienn:20170404143713j:plain

1 実地指導とは

実地指導とは、行政が社会福祉施設や介護保険に関する指定事業等および施設を運営する社会福祉法人等に対し、適切な経営が実施されているかについて、実際に現地へ赴き、法的に定められた確認および指導を行うものです。

実地指導として実際に行政の監査員が施設へ立ち入り、施設の人員や設備等の確認をすることになりますが、必要な書面を事前に提出し、現況の確認のみ行う、いわゆる書面指導とする場合もあります。

実地指導の実施時期は各自治体によりばらつきはありますが書面による指導と交互で1~2年後に実施される場合が多いようです。

過去の指導にて指摘事項が多数に及んだ場合や改善が図られていないと判断された場合は、いわゆる監査として集中的な介入指導および返還含めた行政処分に至ることがあります。

2 実地指導による不正とは

本来、実地指導は、行政が制度管理のもと、事業者がより良いケアを提供していけるようアドバイスを実施していく機会と考えられています。

一方的に行政が事業者を取り締まる目的はないという前提があります。

しかしながら、不適切な事業運営のもと、利用する高齢者、障害者等の利益が損なわれるといった状況には徹底した行政介入があることも理解しておかなければなりません。

介護の社会化が提唱されて久しい昨今、介護事業者には、限られた社会保障財源のもと効率よく社会福祉を実現していく責務が求められます。

介護事業者が不正の指摘を受け、事業の是正勧告あるいは指定の取り消しを受けるケースが増加しています。

事業者が意図的な不正を働くのであれば、是正を積極的に図っていく必要がありますが、中には制度そのものの理解がない、不正の認識がない「意図しない不正」が多くあるようです。

そのためにも十分に制度を理解し、実地指導による指摘事項には真摯に対応する心構えが必要です。

ここでは、介護保険制度に関連した施設および在宅におけるサービス提供事業者について 、不正につながる指摘事項を確認していきましょう。

社会福祉施設および介護サービス提供事業所等への実地指導

実地指導による主な指摘事項としては

  • 介護サービス計画(ケアプラン)内容について、作成されていないもしくは利用者及び家族の同意が得られていない。
  • 提供するサービスの具体的内容が記録されていない。
  • 提供したサービス実績に基づき適正に介護報酬の算定がされていない。
  • 職員の勤務体制について、常勤、非常勤、専従と兼務、常勤換算等が予定と実績に基づき明確にされていない。

などが挙げられます。

利用者のニーズに応じたケアプランの作成等、ケアマネジメントの過程をしっかりと踏んでいることが重要です。

アセスメントやケアプランおよび支援経過等の記録にて、適切なケアの提供であることを示さなければなりません。

また、利用者の生命にかかわる観点、虐待や身体拘束について防止策がなされているかについても指導項目となっています。

実地指導の結果について同じ項目を再三指摘されると、不正とみなされ重い行政処分の対象とされてしまいますので十分な注意が必要です。

 

実地指導後の数週間以内に「指導項目」「改善項目」とその理由について記載された「実地指導結果報告書」が都道府県や市町村から事業所宛に送付されます。

その内容をふまえ、事業所内で各項目の改善に向けての取り組みを実行しますが1カ月以内にその改善結果を「実地指導に基づく改善結果報告書」としてまとめ、都道府県や市町村に提出します。

介護給付対象サービスについては、算定および請求に関し過誤が認められたときは自主返還として過誤申請の手続きを行い、指導のあった月から最長で5年分まで自主返還することになります。

事業所から実地指導に対する改善結果報告が行われない場合、過誤の点検後に適正な自主返還が行われない場合は、指定基準違反等の事実関係を確認するため、数週間以内に監査というかたちであらためて行政による介入が行われます。

監査について

監査に至るまでには、行政によって以下のように様々な事前情報が精査されます。

  • 各自治体が利用者や家族、介護関係者からの通報、苦情、相談に基づく情報
  • 国民健康保険団体連合会、保険者からの情報提供
  • 介護給付費適正化システムの分析にて特異傾向を示す事業者 等

事前の内定のもと実施されることになるため、「不正が行われている」という予見にて実施されるもので、限りなく黒であると判断された場合の処置であるといえます。

指定基準違反の内容等が関係法項目に該当することで、介護事業者については指定・許可の取り消し、または期間を定めて、その指定・許可の全部もしくは一部の効力の停止となります。

また、指定の取り消しについてはその旨が公示されることになります。

指定取消の事由としては、「職員の人員基準が満たないにもかかわらず減算せずに請求した」「利用者に対して介護計画書(ケアプラン)を説明・交付をしていない」「帳票類の提出に応じない(虚偽の報告)」等があげられます。

3 介護報酬等の返還

監査による指摘に伴う返還

監査の結果、行政上の処分に至らない軽微な改善を要すると認められ、これに係る介護給付費の過誤が認められる場合、監査による指摘事項に対して、事業所が自ら精査し、既に請求、受領した介護給付費について不正に該当する部分を自主返還するものです。

介護サービス計画書(ケアプラン)の作成交付がない状態でサービス提供を行った場合、当該利用者分の計画作成にかかる報酬のみならず、特定の事業所に対する加算全体も返還対象に含まれるため、不正期間が長いほど多くの返還が生じることがあります。

行政処分による返還

監査により、指定基準違反が認められ、事業の指定停止もしくは取消について、介護給付費の全部または一部について、返還金額(概算額)等の通知とともに不正利得の徴収として返還を命じられます。

不正が明らかになっても自主返還に応じない等のケースに対して、より強制的な処分であるといえるでしょう。

返還対象期間としては、原則2年間となります。

4 実地指導による返還事例

サービス種別 認知症対応型共同生活介護
所在地 新潟県長岡市
処分内容 指定の取消(H28.12.19)
処分理由 平成27年1月21日から平成28年5月サービス分までの15ヶ月間、人員基準欠如に伴う介護給付費の減算(3割)をすることなく不正に請求し受領した。
返還請求額 8,319,437 円(加算金含む)

 

サービス種別 通所介護 訪問介護 居宅介護支援
所在地 福岡県北九州市
処分内容 指定の取消(H28.12.22)
処分理由 ①通所介護、訪問介護
  • 居宅介護サービス費(介護予防サービス費)の不正請求があった。
    ※通所介護:人員基準違反(看護職員のうち1名を未配置)で運営していたが、介護報酬の減算(30%減)を行わずに不正な報酬請求を行った。
    ※訪問介護:訪問介護サービスを提供していないにも関わらず、サービス提供記録を作成し不正な報酬請求を行った。
  • 指定居宅サービス事業者(指定介護予防サービス事業者)が不正な手段により指定を受けた。帳簿書類提出・提示等を命ぜられた際、虚偽の報告、答弁を行った。

②居宅介護支援
  • 居宅介護サービス費の不正な請求事務を、法人役員でもある介護支援専門員が認識しながら、給付管理を行い、不正請求を幇助した。
返還請求額 通所介護 約8,270,000円 訪問介護 約120,000円(加算金含む)

 

サービス種別 通所介護 居宅介護支援 等
所在地 静岡県焼津市
処分内容 指定の効力停止(H29.1.5)
処分理由
  • 通所介護にて看護職員を適正に配置していなかったにもかかわらず減算せずに不正請求を行った。
  • 居宅介護支援事業所にて不適正な給付管理を行った運営基準違反があった。 等
返還請求額 約58,000,000 円(加算金含む)

5 実地指導の対策について

実地指導の通知が届いてから慌てて関連書類をチェックする等の準備を始めるというのでは、実際の業務に集中することができなくなりますし、時間がいくらあっても足りません。

通所介護や訪問介護などの在宅サービス事業者においては、日頃より居宅サービス計画書(ケアプラン)の内容に基づいて、介護保険被保険者証の認定期間に応じた「サービス提供計画書」等を作成し、その内容をもってサービス提供をおこなっていることを利用者とその家族へ説明同意を繰り返しおこなっていくことが何よりの対策となります。

サービスの提供にあたっては支援経過をしっかりと記録化することが大切です。

常に提供した日時とともに、時系列でサービスの提供が明示できるようにします。

あくまで提供の実績に基づいた報酬請求を行っていきます。

サービス提供事業所においては、職員の常勤換算を毎月チェックするとともに、予定と実績を明確にしておく必要があります。

職員配置に応じた加算項目については、算定方法を熟知しておくことが大切です。

実地指導により指摘された事項については、速やかな対応が求められます。

時間の経過は、場合によって虚偽・隠蔽と捉えられ、より重い行政処分等、事態の悪化を招くことがあります。

真摯に対応していきましょう。

 

○対策に関する詳細はこちら

介護保険施設等 実地指導完全対策 - 介護支援ブログ

6 まとめ

実地指導は過剰に「構える」必要はありません。

日頃から事業所としてのコンプライアンスを明確にし、職員一人ひとりがポイントを抑えておけば「不正」という判断を受けることはないと思います。

また、それができる事業所は利用者に対し質の高いサービスを提供できるのではないでしょうか。

実地指導においては事業所の課題が自ずと浮き彫りになります。

そのことを自覚し、行政としっかりとコミュニケーションを重ねることが、実は最大の防御なのかもしれません。

 

 

実地指導について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

 

(専門家監修:矢野文弘 先生)

にほんブログ村 介護ブログ