介護支援ブログ

介護制度について分かりやすく解説しています。介護に関っている全ての方々に役立つ総合介護情報サイト目指しています。現在は主に介護職員処遇改善加算、キャリアパス要件、介護保険施設等の実地指導について執筆中です。

総合事業の実施要綱とは。その内容を詳しく解説

 2015年(平成27年)の介護保険制度改正において、新たに総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)が始まりました。

 サービス提供対象者の範囲が広がることによって、より多様化された対応が必要となります。

 今回は総合事業における実施要綱について、詳しく解説いたします。

 ぜひ一読し、今後の経営にお役立ててください。

 

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総合事業とは

 

  総合事業とは、「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」の二つから構成されています。

 サービスを選ぶ幅が広がって、個々のニーズに応じたサービス利用が可能となります。

 

  • 対象者

    介護予防・生活支援サービス事業

     要支援1または2、基本チェックリストで生活機能低下がみられた人

    一般介護予防事業

     65歳以上全ての人

  • サービス内容

    介護予防・生活支援サービス事業

     訪問型、通所型サービス、介護予防ケアマネジメント

    一般介護予防事業

     各種介護予防教室、介護予防ボランティア養成講座、

     地域リハビリテーション活動支援事業

  • サービスを利用するには

     地域包括支援センター等へ相談します。

  • 目的

     来る2025年には、団塊の世代が75歳以上となります。高齢者夫婦のみ世帯や認知症高齢者の増加が見込まれる中において、社会保障費を抑制することや、市町村が中心となり、介護や医療、生活支援等を一体的に行う、地域包括ケアシステムを構築することが、大切な視点となります。

 

 

総合事業の実施要綱

総合事業の実施要綱とは

 実施要綱については、各指定権者(市区町村)が厚生労働省の示した概要の解釈を行い、作成しています。

 そのためこの記事での解説は、一つの例として示すものであって、詳しく知りたい方は各市区町村のホームページ等で確認してください。

 ここでは、春日井市の実施要綱を例にして解説します。 

 

主旨

  実施要綱においては、介護保険法(以下「法」)の実施について、第115条の45第1項に規定している総合事業を実施するため、必要な事項に関して定めるものとされます。

目的

  総合事業においては、地域で暮らす住民やボランティアに加え、民間企業などが多様に組み合わさって支援を提供することにより、地域で暮らしている高齢者が、これからも住み慣れた地域で、できる限り自立した日常生活を送ってもらうことを目的としています。

 

内容

 市長は、総合事業に関して、下記にあげる事業を行います。

 

  1. 第1号事業
    1. 第1号訪問事業
      • 介護予防訪問介護相当サービス(事業対象者が自立した生活を送ることができるよう、ホームヘルパーによって、食事や入浴など日常生活に関した支援が行われます)
      • 短期集中型サービス(第1号訪問事業の中で、短期集中的に実施するようなサービスのこと。例えば、理学療法士が生活機能訓練を短期集中的に行うなど。)
      • 住民主体のサービス(第1号訪問事業の中で、住民主体となって提供されるサービスのこと。例えば、掃除や洗濯、買い物などといった日常生活を送る上で必要な支援を行うなど。)
    2. 第1号通所事業
      • 介護予防通所介護相当サービス
      • 緩和した基準によるサービス(第1号通所事業の中で、緩和した基準によるサービスのこと)
      • 短期集中型サービス
      • 住民主体のサービス
    3. 第1号生活支援事業 配食サービス
    4. 第1号介護予防支援事業
  2.  一般介護予防事業
    1. 介護予防把握事業
    2. 介護予防普及啓発事業
    3. 地域介護予防活動支援事業
    4. 一般介護予防事業評価事業
    5. 地域リハビリテーション活動支援事業

実施方法

 総合事業は、市が直接実施しているほかに、下記に示す方法によって実施することが可能です。

 

  1. 指定事業者または地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等の関する法律(以下「改正法」)附則第13条に規定されている指定事業者の指定を受けたとみなされるみなし事業者によって実施される。
  2. 法の第115条の47第4項に規定している、委託を受けた者によって実施される。
  3. 省令第140条の62の3第1項第2号に規定している、補助を受ける者によって実施される。
  4. 春日井市配食サービス利用助成金交付要綱第10条の規定によって、市に登録している事業者によって実施される。

 

指定の有効期間

 指定事業者における指定の有効期間は、法第115条の45の6第2項に規定されている6年間とされています。

 ただし、平成27年4月1日から平成28年3月31日の間において、旧介護予防訪問介護や旧介護予防通所介護に関して事業者指定を受けたか、またはみなし事業者の指定を受けた際の有効期間は、指定を受けた日から、平成30年3月31日までとなっていますので、注意しましょう。

 

支給限度額

 事業対象者の支給限度額については、居宅介護サービス費等区分支給限度基準額または、介護予防サービス費等区分支給限度基準額第2号イに規定している、要支援1の介護予防サービス費等区分支給限度基準額の100分の90に相当している額を超えることはできません。

 

 しかしながら、事業対象者が退院してすぐのため、短期集中的にサービスを使うことが、自立支援につながるであろうなどと考えられるなど、市長が認めた場合については、支給限度額に関して要支援2の介護予防サービス費等区分支給限度基準額相当であるとすることが可能です。

 

第1号事業の利用対象者

 第1号事業の利用対象者は、下記のどれかに該当する者です。

 なお、住民主体のサービスは、65歳以上すべての高齢者が対象となっているため、ここでは除きます。

 

  1. 居宅要支援被保険者(介護保険において、要支援認定を受けた者)
  2. 介護保険法施行規則(以下「省令」)第140条の62の4第2項に規定している事業対象者(基本チェックリストの該当者である第1号被保険者)

 

 住民主体のサービスや一般介護予防事業に関しては、第1号被保険者と当該サービス等に関わる全ての者が対象となります。

 

第1号介護予防支援にかかる届出

 サービスを受けたいという事業対象者は、介護予防ケアマネジメント依頼届出書に加えて、被保険者証と、平成27年厚生労働省告示第197号に定めている基本チェックリストの結果を添付して、市長へ届け出る必要があります。

 尚、市長は、地域包括支援センターに対して利用手続きを委託することが可能です。

 

事業対象者にかかる第1号の事業の費用

 費用の額については、別表によりサービス種類ごとに単位数が定められています。

 市長が別に定めた単位数を基に、1単位の単価についても規定されており、単位数に単価を乗じて算定します。

 算定した額が、1円未満の端数がある際は、端数金額は切り捨てとなります。

 なお、春日井市で行っている、配食サービスに関する費用は、1食あたり300円となっています。

 

事業対象者の有効期間

 基本チェックリストによって事業対象者となった者については、有効期間という考え方はありません。

 しかしながら、サービス利用時の状況であったり、身体状況の変化などだったりを把握し、適宜基本チェックリストで本人の状況を確認していくことが必要とされます。

 市区町村によっては、事業対象者の有効期間を2年間と定めているところもあります。

 

事業対象者の終了

 総合事業の、住民主体のサービスを除いた介護予防・生活支援サービス事業においては、要支援1と要支援2の高齢者を対象としています。

 そのため事業対象者が終了となるのは、要介護状態へ移行した際ということになります。

 ただし、第1号事業を利用していて、要介護認定を受けた者で、認定が申請日に遡って有効になるため、その期間が全額自己負担とならないよう、介護給付のサービスを受けるまでの間は事業対象者であるとされています。

 要介護認定を受けた後でも、介護給付サービスを利用しなければ、事業対象者であることは可能です。

 

 

まとめ

 総合事業要綱について、解説してきました。

 今回は春日井市の例を取り上げましたが、各市区町村によって解釈も異なるため、必要ならばホームページ等で確認することをお勧めします。

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総合事業について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

 

(専門家監修:矢野文弘 先生)

通所介護における、サービス提供体制強化加算とはどのようなものか?

 通所介護事業者の皆様の間でも話題にあがる、サービス提供体制強化加算。

 経営者様や管理者様向けの内容となっていますので、算定要件や単位数など確認し、今後の経営にお役立てていただけたらと思います。

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通所介護におけるサービス提供体制強化加算とは?

 通所介護におけるサービス提供体制強化加算は、サービスの質を安定的に保っている事業所を評価するための加算です。

 加算の算定要件としては、介護福祉士資格を保有している職員や、勤続年数が3年以上の者を一定以上にわたり雇用していることなどがあります。

 

 サービス提供体制強化加算がうまれた背景としては、事業所の介護の質を高めるといった視点に加えて、介護職員を安定的に確保することが難しくなっているということがあります。

 一般的に介護職員は、看護師等、他職種と比較して賃金水準が低い事や、介護分野という専門性はあるものの、なかなかそれが評価されにくいなどの理由により、離職率が高いという状況があります。

 求職者においても、介護職員を目指したいという者も減少傾向にあるなど、将来にわたって慢性的に人出が不足することが懸念されています。

 

 こういった状況を乗り越えるため、介護職員に対する処遇を見直し、人材を安定的に確保していけることがサービス提供体制強化加算の目的の一つです。

 介護職員が働きやすい環境を整え、離職率を少しでも減らし、新たに求職する者の割合を増やしていくことで、将来の人手不足を解消していこうという役割があります。

 

通所介護におけるサービス提供体制強化加算の単位数は?

 ここではサービス提供体制強化加算の単位数について解説します。

 通所介護の場合と総合事業の単位数について、それぞれ以下のようになっています。

 

  1. 通所介護(保険給付)の場合

 (Ⅰ)イ 18単位/回

 (Ⅰ)ロ 12単位/回

 (Ⅱ)6単位/回

 

  1.  総合事業の場合

 (Ⅰ)イ 要支援1 72単位/人・月

      要支援2 144単位/人・月

 (Ⅰ)ロ 要支援1 48単位/人・月

      要支援2 96単位/人・月

 (Ⅱ)  要支援1 24単位/人・月

      要支援2 48単位/人・月

 

 通所介護(保険給付)の場合は、一日当たりの単位数となっていますが、総合事業の場合は、一月あたりの単位数となっていますので、間違えないようにしましょう。

 

 

通所介護におけるサービス提供体制強化加算の算定要件は?

 ここではサービス提供体制強化加算の算定要件について解説します。

 算定要件を満たすためには、人員基準を満たすことと、定員超過のないことという前提条件が必須となります。

 

 (Ⅰ)イについて、介護福祉士が50%以上配置されていること。

 (Ⅰ)ロについて、介護福祉士が40%以上配置されていること。

 (Ⅱ)について、勤続年数が3年以上ある者が、30%以上配置されていること。

 

 上記のうち勤続年数とは、各月の前月末日時点において算出されます。

 例を挙げると、平成29年5月時点で勤続年数が3年以上ある者とは、前月の4月30日で勤続年数が3年を経過していなければいけません。

 

 

通所介護におけるサービス提供体制強化加算の人員割合計算方法は?

 ここでは人員割合の計算方法を解説します。

 算定要件が複雑であり、例年計算間違い等みられるため、計算方法はしっかり確認しておきましょう。

 平成28年度に加算を算定する場合、前年度11カ月間(平成27年4月~平成28年2月)の平均が、所定の割合以上である場合、平成28年度通して算定することができます。

 

 事務手続きとしては、以下の通りです。

 

  • 2月における勤務実績が確定した後、4月からの算定が可能か否かを毎年確認することが必須です。毎月の勤務実績確定後に、各月の常勤換算した後の人数と、対象となる従業者の常勤換算した後の人数を算出して記録しておきます。

 

  •  人員割合の算出については、介護職員の常勤換算数を11カ月合計した平均(A)を、Aのうち介護福祉士である者の常勤換算数を11カ月合計した平均で割ります。届出る際に必要な書式があります。各自治体のホームページ等からダウンロードしておきましょう。

 

  •  要件を満たしていない時は、取下げのための届出が必要になります。年度の途中で算定を開始したり、算定区分を変えたりした事業所は、要件を満たしていない恐れがあるため注意しましょう。

 

 ここでいう常勤とは、事業所において定めている常勤の従事者が、勤務すべき時間数に達していることを指します。

 パートタイムであっても、理論上は常勤としてみなされる場合もあります。

 また、対象となる従業者が、管理者など他職務との兼務を行っている場合は、対象の従業者として勤務している時間のみ算出することとなります。

 管理者として勤務した時間については、含まれないため注意が必要です。

 

 

届け出の方法と期限

 サービス提供体制強化加算を取得しようとする場合、提出が必要となる様式があります。

  1.  介護給付費の算定に係る体制等に関する届出書(体制届)
  2. 介護給付費の算定に係る体制等状況一覧表
  3. サービス提供体制強化加算に関する届出書
  4. サービス提供体制強化加算算定に係る職員割合算出シート
  5. 各サービス及び加算の区分に応じて必要な添付書類(書式は任意)

 

 新たに加算を算定する場合において、運営実績が6カ月以上の事業所も、6カ月に満たない事業所も、算定用件を満たしている時は、上記全ての様式を提出します。

 

 継続して算定する場合で、運営実績が6カ月に満たない事業所が、職員割合の算定用件を満たさない時、1~3の様式を提出します。

 算定用件を満たしている場合は、継続しての算定が可能ですので、提出は不要です。

 但し、算定区分が変更となる場合は必要です。

 運営実績が6カ月以上の事業所についても、同様の扱いとなります。

 

 届け出先は各自治体の介護保険課等になります。

 また提出期限は、各自治体によって異なりますが、概ね算定の開始を希望する月の前の月の15日までとなっています。

 加算の取り下げや、算定の区分を変更する場合も同様です。

 年度途中より算定する時は、算定開始日の前月15日までとなります。

 

 

注意事項

 サービス提供体制強化加算について、間違いやすいポイントを解説しますので、参考になさってください。

 

  • サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イと、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)ロ、この二つの要件を共に満たしている場合、同時に取得することはできません。この場合においては、上位となる(Ⅰ)イの加算を取得するということになります。実地指導などにおいて、サービス提供体制強化加算(Ⅰ)イの算定要件を満たさないとなった時は、一度(Ⅰ)イで取得した加算の返還を行う必要があります。その上で、(Ⅰ)ロの要件を満たしている時は、その加算を取得するため、新たに届出を行わなくてはなりません。

 

  • 人員割合の計算方法についてですが、前年度の実績が6ヶ月を経過していない事業所については、届出日を含んだ前3ヵ月に関して、常勤換算方法を用いて算出して平均を出します。新しく事業を始めたり、事業を再開したりした事業者に関しては、事業を開始してから4カ月目を経過した以降に届け出ることが可能です。届出後に関しても、直近3ヵ月の人員割合は毎月所定割合を維持していく必要があり、記録に残さなければなりません。所定割合を下回った時は、届出を提出しましょう。

 

 

まとめ

 今回は通所介護のサービス提供体制強化加算について解説しました。

 細かい規定がありますが、正しく理解することで、円滑に加算を受けられるようにしたいものです。

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サービス提供体制強化加算について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

 

(専門家監修:矢野文弘 先生)

居宅サービス計画書とは?

平成12年4月にスタートした介護保険制度。施設サービスと在宅サービスの二本柱から成り立っています。どちらのサービスにおいても、利用者の気持ちに応えられるサービス提供が前提となっています。

利用者の望む形の在宅生活の実現のために欠かせない存在が、介護支援専門員(ケアマネジャー)です。利用する介護サービスを組み立て、その人らしく目標に向かって前向きに暮らしていけるような生活を組み立てる、なくてはならない存在です。

ケアマネジャーが作成する居宅サービス計画書(ケアプラン)には、利用者本人、ご家族の思いや希望、担当するケアマネジャーの専門性が凝縮しています。

そのケアプランをめぐっては、平成30年の介護保険制度改定に向けて「有料化」に向けた議論がなされています。平成29年現在、担当のケアマネジャーがケアプランを作成する「居宅介護支援」については全額保険で賄われていますが、その額は年間約4200億円。ケアプラン有料化は年々増大していく介護保険費用の抑制のため、以前から取り沙汰されてきました。有料化が実現すれば、ケアマネジャーが作成するケアプランに対する世間の目はより厳しいものになります。

ケアマネジャーにとっては「集大成」というべきケアプランですが、業務に追われながらケプラン内容に漠然と不安を抱いているケアマネジャーも多いことと思います。改めて一から振り返ってみましょう。日々の不安が解消され、より専門性が発揮できるようにお手伝いできればと思っています。ではさっそく見ていきましょう!

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1居宅介護サービス計画書とは

○ケアプランの概要

居宅介護サービス計画書(ケアプラン)とは、文字通り介護保険のサービスをどのように利用していくかを示す計画書です。サービスを利用するためには、前もってケアプランが作成されている必要があります。また定期的に内容を振り返って評価し、修正して更新していかなければなりません。現在、介護保険の要介護認定は最長2年間で必ず更新が必要です。その際にもケアプランを更新する必要があります。

ケアプラン作成にあたっては、必ず利用者と面接し、本人の生の声を聞いて作成します。利用者本位のプラン作りには絶対に欠かせないプロセスです。

ケアプランの作成は、主にケアマネジャーが行いますが、利用者本人がプランを作成すること(セルフケアプラン)も可能です。ケアマネジャーにとっては、専門家としての腕の見せどころとなります。日頃から介護保険の各サービスについての幅広い知識(または知識を持った専門家とのつながり)が必要です。

ケアプランには「総合的な援助方針」が示されています。この方針に基づき、「目標」が立てられます。目標には長期目標と短期目標があり、それぞれに達成の目処となる時期が明記されます。

「目標」の達成のために必要な介護サービスの種類や回数が設定され、予定表という形で添付されます。

各表の詳細は、次の項目2で解説していきます。

○他のケアプランとの違い

・施設サービスにおけるケアプラン

老人保健施設、特別養護老人ホーム、介護療養型医療施設などにおいても、サービスの提供にはケアプランが必要となります。施設サービスは種類によって、施設に入居する目的が大きく違ってきます。老健は、それまでの入院リハビリ(医療保険)から介護保険の枠組みに切り替えてリハビリを継続するための施設です。入居の目的はあくまでも「在宅復帰」です。そのため、退所して自宅へ帰る日を最終的なゴールとして、逆算的なプラン設計が行われます。

一方特養は、「終の棲家」とも言われるように、いったん入居したら在宅へは戻らないことが一般的です。そのため、施設内での生活が継続できることを目的としたプランが立てられます。

・居宅ケアプランと施設ケアプランの違いとは?

居宅ケアプランが施設ケアプランと異なる最も大きい点は、「在宅生活を継続するためのプラン」であることです。そのため、利用者の意向だけでなく自宅の環境についてもしっかりと把握していかなければなりません。

・介護予防サービス計画書(予防ケアプラン)との違いとは?

予防ケアプランは、要支援1または2の人が介護予防サービスを利用する場合に作成される計画書です。要支援の方は、要介護状態の方に比べて自分でできることがたくさんありますので、より自立志向型のプランとなります。状態によっては初回のみ作成して原則更新がないパターンもあります。

介護サービス計画書の方が相対的にサービスの利用頻度が高く、また利用者の状態もより重症であるため、定期的なアセスメント、モニタリングが欠かせません。

2居宅介護サービス計画書の様式

○第1表

第1表は、サービス全体の方向性を示す重要な役割を果たします。利用者やご家族が、介護保険のサービスを使ってこれからの生活をどのように組み立てていきたいかを記載します。

しかし、利用者・ご家族に初めから明確な方向性があることは考えにくいと言えます。相手にとっては「介護保険」はよくわからない制度です。「デイサービスに通えば風呂に入れる」など、断片的な情報でサービスを希望されるケースも多くあります。しかし、仮に「入浴」が目的であるとすれば、デイサービスだけでなく訪問介護や訪問入浴も選択肢となります。

このように、サービスの種類やそれぞれの特徴、料金などを一つ一つ説明していく中で徐々に利用者・ご家族の目指す方向性が定まってくるものです。これはケアマネジャーにとって信頼関係の構築にも関わる重要な過程です。

右上にある「初回・紹介・継続」欄について解説します。この欄には3つの項目の中から1つに○をつけます。このうち、「初回」は初めて当該事業所で居宅介護支援を受ける場合に選択します。すでに他の事業所(同法人内の別事業所も含む)において居宅介護支援を受けていた場合、または施設介護サービスを受けていた場合に選択します。

○第2表

第2表は、利用者のニーズ(課題)に対して具体的な目標を立てて、対象となるサービス内容を明記します。ニーズは、課題分析(アセスメント)から導き出していきます。このアセスメントがケアマネジャーの腕の見せどころです。

目標は短期目標と長期目標とに分かれます。長期目標の達成のために、より具体的にした目標を複数個、短期目標として設定します。短期目標の設定期間後が経過したあとは、達成度合いを評価し、未達成であれば継続または変更とします。達成できていれば、速やかにレベルアップした次の目標へと変更します。

サービス内容は、サービス種別の短期目標の達成のために、サービスの種類ごとに提供するサービスの内容を具体的に記入します。達成度を測りやすくするためには、より明確な目標設定が望ましいです。目標の達成は数値化が難しく、できたかどうかが曖昧になりがちです。下記の例のように、できたかどうかを判定できるように設定していきましょう。

(例)×トイレ動作の練習をする ⇒ ○自分ひとりでトイレにて一連の排泄行為ができる

 

また、プランニングにあたってしばしば長期目標・短期目標の期間設定に悩むことがあります。一般的には長期目標については半年から2年とされている場合が多いでしょう。目標期間の設定については介護保険の認定期間を考慮するとされているため、長期目標が介護保険の認定期間と同じく2年であっても間違いではありません。

短期目標は長期目標の達成状況を見やすく細分化したものですから、長期目標の期間を超えない半年以内程度とされます。この短期目標の目標設定が明確であると、目標を達成できたかどうかの評価がしやすく、長期目標の進捗状況も把握しやすくなります。

現在の身体機能の能力を維持することだけではなく、改善していくことも考えてプランを作っていく必要があります。手続きに時間的・費用的なコストがかかることから、介護保険の有効期間も長期化しています。目標の達成状況をまめに確認していくことも、ケアマネジャーには求められています。

○第3表

第3表は、週間サービス計画です。一週間を一枚の用紙で俯瞰できるようにすることで、サービスの使用状況を把握することができます。定期利用の訪問介護やデイサービスなど、曜日と時間が固定されているものを記入するだけではありません。福祉用具のレンタルのような月単位のサービス、スポット利用のショートステイなど、計画されているサービスは基本的に全て記入します。

利用者の生活は、介護保険サービスのみで組み立てられるわけではありません。医療的な関わり(通院、往診)も重要ですし、ご家族の介護力や友人との交流なども、その人の生活を支えています。利用者の生活パターンは、起床時間などに限らず、他者とのつながりや趣味なども含めて幅広く記載するとよいでしょう。

また、主たる介護者である、ご家族の生活パターン(仕事の休みなども含む)も細かく記載できると、サービスの見直しの時にあてはまるサービスを探しやすくなります。

○第4表

第4表はサービス担当者会議についての記録です。サービス担当者会議は、ケアマネジャーの呼びかけにより、利用者・ご家族のほか、サービスを提供する事業所の担当者が集い、利用者のより良い生活を組み立てるための重要な会議です。

公的な会議記録としての機能もありますので、会議の参加者についてはしっかりと所属と名前を確認しておきましょう。どんなことを話し合ったか重要なポイントを入力します。

 事業所によっては会議への参加が難しい場合もあることと思います。その場合は事前に照会を行います。詳しくは次の「第五表」で解説します。

担当者会議を開催する際は、ケアマネジャーとして「テーマ」を持って臨みましょう。単なる顔合わせや経過報告では、参加者の貴重な時間を浪費してしまいます。テーマに深く関わる事業所の担当者には必ず参加してもらえるように、余裕を持って日程調整を行いましょう。

話し合いによって決定した事項は、

  1. いつまでに行うか(期限)
  2. 誰が行うか(担当者)
  3. どのように行うか(方法)

が明らかになるようにしておく必要があります。記録についてもこの3点を明記するように心がけましょう。

また、担当者会議の記録は速やかにまとめ、参加者に配布します。共通理解を得るためには、記憶が薄れないように記録のスピードも重要となます。

○第5表

第5表を使用するのは以下の2つの場合です。

  1. サービス担当者会議が開催できない場合
  2. サービス担当者会議に出席できない担当者に、前もって意見を照会する

使用する場合は、会議を開催できない理由や、出席できない理由を明らかにしておく必要があります。2.の場合は必ず当日までに照会を受け、代読することで他の参加者に伝えるようにします。

○第6表

第6表は居宅介護支援経過です。ケアマネジャーが利用者やご家族、サービス事業所担当者とのやり取りを記載します。記録はケアマネジャー個人の備忘録やメモではなく、公的なものとなりますので、必ず日時・相手方の名前を記載します。

利用者やご家族の意向や満足度については、モニタリングを行った結果をありのままに記載します。特にニーズの捉え方に利用者・ご家族の認識不足がある場合などは、ケアマネジャーが感じたことについても記載し、詳細が後からわかるようにするとよいでしょう。この場合、客観的なものと主観的なものが混在しないように注意します。

電話連絡などのやりとりについては、簡潔に要点を書くように心がけます。項目を分け、整理して記載しましょう。

○第7表

第7表はサービス利用票となります。カレンダーが組みこまれていて、一ヶ月単位で提供される介護保険サービスの予定と実績をサービスごとに入力できるようになっています。

○第8表

第8表は「サービス利用票別表」です。第7表に記載された介護保険サービスの単価(単位)と一ヶ月の総額が記載されます。サービス区分ごとの合計額がわかるようになっています。

この表を見ると一ヶ月分の介護保険サービスの金額が分かります。利用者やご家族と必ず確認し、金額の認識に間違いがないか確認することが重要です。特に全額自己負担となっているものがある場合には、高額になるため注意しましょう。

3居宅介護サービス計画書」の記入例

では、実際の様式に記載するための注意点を踏まえて記入方法を確認していきます。

居宅サービス計画書雛形 (神戸市役所ホームページより)も併せてご確認ください。

第1表

 

  • 上段の利用者名や生年月日など、基本情報には間違いがないように注意して記入します。
  • 計画書はあくまでもサービスを提供するために作成するものですから、作成日はサービスが提供されるよりも前でなくてはなりません。
  • 「利用者及び家族の生活の対する意向」欄には本人、家族の言葉をそのまま記載します。もしも利用者とご家族の意向に相違があり、お互いに言えないような状況がある場合はこの欄には記載せず、第6表の支援経過に記載します。
  • 「総合的な援助の方針」には、担当者会議を開いたうえで、利用者とご家族の意向を十分に反映したチームケアの指針を記載します。

 

第2表

 

  • 一番左の欄に、利用者及び家族のニーズを記載します。優先順位の高いものから順番に記載していきます。その際、自立支援の観点からネガティブな表現を避け、「○○できるようになりたい」といった表現を使います。
  • 長期目標は、ニーズが達成できる内容となり、短期目標は長期目標を具体的に手順化したものと考えます。
  • 短期目標を達成するために、必要なサービス内容とサービス種別、頻度、期間を記載します。ご家族が協力する場合などインフォーマルな支援についても、記載しましょう。
  • 期間については、一般的には長期目標については半年から2年、短期目標は長期目標の期間を超えない半年以内とされます。
  • 短期目標の目標設定はできるだけわかりやすいものにしておくと、達成できたかどうかの評価がしやすく、長期目標の進捗状況も把握しやすくなります。

 

第3表

提供される介護保険サービスを計画表に組み込みます。通院などの医療的なサービスやボランティアなどインフォーマルな支援も合わせて記載します。

「主な日常生活上の活動」に、利用者の生活リズムを記載します。できるだけ詳しく記載しておくと、サービスの有効性が確認しやすくなるとともに、修正も容易となります。週単位ではないサービスについては、「週単位以外のサービス」へ記載します。

○第4表

 

  • サービス担当者会議を行った日時、場所と、今までの累積回数を記載します。
  • 出席者については、記載の際に困らないように、必ず所属先と名前を確認しておきましょう。
  • 会議内で検討された項目と内容について整理して記録します。結論は項目ごとにまとめ、「誰が」「いつまでに」「どうやって行う」のかを明らかにします。
  • 「残された課題」には持ち越された項目を示しておきます。特に意向がありながらサービス提供の環境が整わない場合(デイサービスに行きたいが空きがないなど)は必ず記載します。次回の開催時期についても共有しておきましょう。

 

第5表

  • サービス担当者会議に参加できない担当者に、前もって情報提供と意見を求めるものです。当日までに間に合うよう、欠席がわかった時点で依頼しておきます。
  • 会議の中では、ケアマネジャーが代読して参加者に伝えます。

第6表

 

  • ケアマネジャーが行った利用者やご家族、サービス事業所担当者とのやり取りを記載します。必ず日時・相手方の名前を併記します。
  • 利用者やご家族の意向については、モニタリングを行った結果をそのまま記載します。客観的なものと主観的なものが混在しないように注意します。
  • 電話連絡などのやりとりについては、簡潔に要点を書くように心がけます。項目を分け、整理して記載しましょう。

第7表

  • 毎月のサービスの予定を記載します。トラブル回避のためにも必ず利用者やご家族に一つずつ確認してもらいましょう。
  • 同意を得てから右上段の「利用者確認」欄へ押印をしてもらいます。欄外に日付も併せて記入してもらいます。

第8表

第7表のサービス内容について、サービスの合計単位数やサービス利用料金、そのうちの自己負担額が記載されます。介護保険の仕組みは一般の人には難しい仕組みです。特にお金の部分については時間をかけて説明します。

 

4まとめ

介護保険の導入以来、サービスを利用したい人には、ケアマネジャーが「無料で」専属して担当してくれる仕組みです。居宅介護サービス計画書の作成も、サービスの多い少ないにかかわらず保険で賄われています。しかし、今後はこの「当たり前」も変わる日が来るかもしれません。

現在は「介護保険を申請しても、サービスを使わずケアマネジャーが担当するだけならお金はかからない」ことが、利用者へのアプローチに大いに貢献している現状があります。しかし「お金がかかるならいらない」という利用者からの「門前払い」が、全国の居宅介護支援の現場で起こるかもしれません。

改めて関心が高まる背景には「ケアプランがきちんとあるべき姿になっているのか」という疑問があることもまた事実です。ケアマネジャー、一人ひとりが自信を持って利用者の自立支援を目指した計画を立て、存在感を高めていけるとよいですね。

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居宅サービス計画書について、こちらからダウンロードできるPDFファイルがわかりやすくまとまっているのでご参考になるかと思います。ぜひご活用ください。

 

(専門家監修:矢野文弘 先生)

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